公開日 2021/08/04 06:40
LGエレクトロニクス・ジャパン、日本市場で戦い抜いた10年が血となり肉となり、世界に誇るテレビ画質へ
VGP2021 SUMMER 受賞インタビュー
有機ELテレビの世界シェアNo.1であり、テレビ市場をけん引するLGエレクトロニクスが、「VGP2021 SUMMER」で有機ELテレビ「G1シリーズ」が特別大賞、同シリーズにも採用される新世代パネル「OLED evo」が企画賞を受賞した。「コロナ禍を経験し、お客様が自分の価値で物事を判断するようになり、本質を見極めた声をよく聞こえるようになった」と市場の変化を指摘する宇佐美氏。手を掛けこだわり続ける“LGらしい製品”が、ニューノーマル時代にさらにキラリと存在感を見せつける。
VGP2021 SUMMER受賞一覧はこちら
LGエレクトロニクス・ジャパン株式会社
マーケティング統括責任者
宇佐美夕佳氏
うさみゆか Yuka Usami
プロフィール/FMCG(Fast Moving Consumer Goods)業界にてブランドマネージャー、マーケティングマネージャーを経て、広くマーケティング分野に従事。新規事業の立ち上げを数多く経験した。2008年より家電業界に転身。「お客様の経験価値を高める」「本質を追い求める」ことをモットーにコミュニケーションストーリーを開発、提案し続けている。
■主役はあくまでコンテンツ
―― 有機ELテレビの世界シェアNo.1であり、現在ではテレビ市場をけん引する立場にありますが、「VGP2021 SUMMER」では有機ELテレビ「G1シリーズ」が特別大賞、そして、同シリーズにも採用される新世代パネル「OLED evo」が企画賞を受賞しました。おめでとうございます。
宇佐美 ありがとうございます。G1シリーズについては実は、本当にギリギリのタイミングでのエントリーでした。皆さんにお見せするために、日本向けのサンプルとして工場に特注し、持ってこられたのが部門賞で金賞もいただいた65インチの「OLED 65G1PJA」です。当時まだ55インチのモデルも準備できていない状況で、チューニング作業にはおよそ1カ月半を要することから、しんどい追い込みになるかと思われたのですが、2年ほど前からフィードバックしているエンジンの仕上がりが大変良かったことから、われわれの予想に反し、ほぼ調整するところもなく、エンジンチューニングを活かしてエントリーすることができました。
―― 2010年11月に日本のテレビ市場に本格参入してから昨年末で丸10年が経ちました。
宇佐美 感慨深いですね。LG電子の時代には、どちらかと言えば低価格ラインやOEMのビジネスに力を入れていて、LGエレクトロニクスとしてコンシューマー向けプロダクトに本腰を入れて取り組み始めたのはモバイルが約15年前、テレビが約10年前に過ぎず、他社に比べればまだまだ若いブランドだと認識しています。製品に対して高い視点を持つ日本市場で戦い抜いていくことに、LGエレクトロニクスのブランド力や製品力を向上していく上で大きな意義があると考え取り組んで参りましたが、その10年で培ってきたすべてのことを、今回のG1シリーズを筆頭に、今日のテレビの製品開発に活かしていく態勢を築き上げることができました。
―― チューニングにも時間がかからないということは、土台がしっかり完成され、日本市場向けに調整する手間が、今はもう極力少なくなっているわけですね。
宇佐美 エンジニアとも話をしたのですが、「10年間やってきたことがしっかり入っている」というのが共通したインプレッションです。これは凄く大きなことで、10年前ならばある程度手を入れなければ、なかなかいい仕上げにならなかったものが、今では一定以上のクオリティをもって世界中で展開ができており、LGの大きな強みとなっています。
―― 審査会では、新世代パネル「OLED evo」はもちろん、制御する高画質プロセッサーともども昨年から一気にレベルアップされていると大変高く評価されました。さらに、御社ならではの壁面にぴったり密着して設置できる「ギャラリーデザイン」の提案など、常に一歩先を行く技術力が改めて注目を集めています。
宇佐美 LGエレクトロニクスは映像技術のリーディングカンパニーとしてこの10年、常に新しい技術を、しかも、高額な上位ラインナップに限定されることなく、すべてのお客様が公平に手にできるように提供してきたと自負しています。例えば、評論家の皆さんに見ていただく際にも、そのためにチューニングを施すことはいくらでもできてしまいますし、10年前には実際にそうした文化が残っていました。しかし今では、評論家の皆様が見てご評価いただいたものと、一般のお客様が手にしたものはまったく同等のもの。それが当たり前のことであり、日本で評価された画質が世界中で手に入れられることは、間違いなくLGエレクトロニクスのブランド力となっています。
―― 有機ELテレビの世界シェアNo.1としての強みはどのように活かされているのですか。
宇佐美 グループ会社で生産した有機ELパネルの素性をそのままに、美しい映像を出してあげるにはどういう調整が必要なのかを一番知り尽くしておりますが、極論、余計なことは必要ないということ。テレビ市場では最近、画質至上主義に走り過ぎて、余計な映像処理をされるケースが少なくないように感じていますが、そうした点も今後、削ぎ落す方向に向かっていくのではないかと思っています。
映像も音も、LGエレクトロニクスでは素の良さをそのまま出すところに軸足があります。例えば、「AIサウンド」は作り手が意図する音をそのまま表現するために、製作者があえて入れているノイズや環境音は省いたりせず、しっかりそのまま残すようにしています。ここが他社との大きな違い。素の良さをそのまま活かそうと素直に取り組めるのはひとつの強みと言えます。4Kや8Kも、いかに人間の目に近い映像を出せるのかを追い続きてきたものであり、「リアリティ=加工」ではありません。素の良さをどれだけ引き出せるかはとても大事。主役はテレビではなく、あくまでコンテンツです。
■LGならではの「ギャラリーデザイン」でピタッと壁に密着
―― G1シリーズを市場導入され、お客様や流通からの手応えはいかがですか。
宇佐美 これまで10年間、テレビ事業を手掛けてきましたが、G1シリーズでは「こんな数字は見たことがない!」と思わず目を丸くするような、過去最大の予約をいただくことができました。本当にありがたかったと同時に、大きな期待に応えていかなくてはと身の引き締まる思いです。65インチと55インチを展開しているのですが、大きさに対する抵抗感は昨年辺りから一気になくなってきていて、ベゼルの薄型化や脚の置き方、壁掛けの提案など、各社の工夫に満ちた取り組みも奏功していると言えます。
―― 大型化に伴い、家庭での設置の仕方は重要なポイントとなりますが、御社ではさきほどの審査会の話にも出てきた「ギャラリーデザイン」を提案されています。
宇佐美 これまでの壁掛けは金具も大きく、その分の厚みがテレビと壁との間に隙間となっていましたが、ギャラリーデザインは、専用の金具を使用することで、テレビを壁に本当にピタッと完全に密着して設置することができます。例えばG1シリーズの65インチなら、わずか1.9oのテレビの薄さの中に、壁掛けに必要となるパーツがすべて納められています。これは、LGグループ内で部材から一貫して調達できる垂直統合の強みが活かされたもので、他にはなかなか真似できないLGエレクトロニクスならではのアピールポイントのひとつと言えます。
―― 先日、開催されたテレビ購入者を対象にした「すっと。応募キャンペーン」では、3つのプレゼントの選択肢のひとつとして「壁掛け工事費50,000円分」が用意されていましたが、応募状況はいかがだったのですか。
宇佐美 他の2つが「LGサウンドバー SN7CY +イヤホンHBS-FN7」「Xbox Series X」でしたが、壁掛け工事費を選ばれたお客様が大変多かったですね。コロナ禍も相俟ってDIYで壁掛けされる方も増えていて、LGエレクトロニクスではそうしたニーズにいち早くお応えして、ご自身で壁掛けできるようガイド付きで壁掛け金具を販売しています。
―― テレビ周りではサウンドバーが好調に推移するなど、大画面化が進むに伴い、“テレビの音”に対する注目も高まっています。
宇佐美 現在、量販店の売り場で音まできちんと聴かせることは大変難しい環境にありますから、テレビを選ぶ際には、「映画」「音楽」「スポーツ」などの求めている音声モードが備えられているか、あるいは、音声をチューニングすることができるかを、確認されることが賢明だと思います。
LGエレクトロニクスの場合は、他社に先駆けてドルビーアトモスに対応しており、現在は価格を重視してお求めになられるローエンドのモデルを除けば、どのモデルを購入いただいても、ドルビーアトモスの立体音響を楽しむことができるのが大きな特長となっています。また、G1シリーズではワイヤレス伝送規格「WiSA」にも他社に先駆けて対応しており、音にこだわるお客様に対し、スピーカーの接続性を高める取り組みにも力を入れています。
カジュアルに音まで楽しみたいニーズは広がっており、弊社でもサウンドバーを同時に購入される方が徐々に増えています。一度いい音を経験されると後戻りできませんからね。映像だけでなく、音も良くなければリアルな体験はできません。販売店とも協力して、音をデモンストレーションできる環境を少しでも充実させていければと思います。
■オーディオビジュアルの楽しみ方は十人十色
―― 7月8日にはQNEDを搭載した新基準の液晶テレビ“LG QNED MiniLED”「75QNED90JPA」が発売されました。
宇佐美 液晶のもうひとつ先にある時代がいよいよ幕を開けました。MiniLEDバックライト、量子ドットテクノロジー、ナノセルテクノロジーの3つの技術を組み合わせた、新しい視聴体験を提供する、液晶テレビの頂点とも言えるモデルになります。
LGエレクトロニクスは、MiniLEDバックライトと量子ドットテクノロジーに加え、色の純度を高めるナノセルテクノロジーが活かされていることが大きな特長で、色のグラデーションが非常に豊富になっています。主に日中のリビングなど明るい環境で楽しみたい方にはQNEDを、映画に代表されるしっとりとしたコンテンツを楽しみたい方には有機ELのG1シリーズをお薦めします。
―― これまでの液晶は有機ELより格下であるといった常識が払拭され、用途に応じて最適なものが選べるわけですね。
宇佐美 発表会のときにも隣に有機ELテレビを並べてお見せしました。輝度ではQNEDが明らかに優っており、パッと見た目の明るさを求める方であればQNEDに目が留まるのではないでしょうか。これまでの液晶は、大型化すると画素が粗くなると言われることもありましたが、LGは大型クラスでも美しさを堪能できる4K液晶として、86インチのモデルも用意しています。
―― 御社はプロジェクターの分野でも活躍されており、今回も4KレーザープロジェクターのLG CineBeam「HU810PB」が金賞を受賞していますが、映像の楽しみ方はますます広がっていきますね。
宇佐美 お客様にとって、楽しみ方の選択肢はあればあるほどうれしいはずです。プロジェクター市場も昨年から凄くよく動いていて、会社や学校にある機材とのイメージをすっかり脱却しました。ティーンエージャーや20代の若い方が、スマホやPCとつなげて壁に投影して楽しんでいます。スマホで撮った写真やムービーを、アプリで簡単に編集して作品作りも楽しめますから、作品を共有、お披露目できる場所としてもプロジェクターが選ばれています。オーディオビジュアルの楽しみ方は本当に十人十色ですね。
テレビも最近では、多くの方が映像配信やユーチューブの動画コンテンツを当たり前のように楽しまれていますが、LGエレクトロニクスでは他社に先駆けて2012年からスマートテレビを市場導入しています。PCやスマホに慣れ親しんだ方なら、手軽にテレビをスマートに使いこなすことができるマジックリモコンを提唱し、当時から大変高い評価をいただきました。ちなみに、プロジェクターで超短焦点のモデルを日本に初めて導入したのもLGエレクトロニクスになります。
■審美眼を持つお客様の声に応える
―― 後半戦へ向けての意気込みをお願いします。
宇佐美 コロナを通して家での楽しみ方のバリエーションは確実に広がりました。改めて生活軸を見直された方もあれば、価値観が随分と変わってしまった方もいらっしゃいます。そうしたなかでひとつ見逃せないのは、きちんと審美眼を持ち、自分軸で判断できるお客様が大変多くなっていることです。その結果、わたしたちメーカーの声が、以前にも増してお客様へよく届くようになってきました。
LGエレクトロニクスは、まさにそうしたお客様からも高い支持をいただいており、ご自身で比較検討し、実際に商品を見て、納得して買いものをされています。LGエレクトロニクスの商品を選んでいただけるお客様の気持ちに真摯にお応えするためにも、さらに貪欲に製品開発を進め、満足できる製品をお届けして参ります。せっかく気に入って購入いただいたのですから、ぜひ長く使っていただきたい。そのためのサービス体制を含め、“安心してお使いいただけるLG”でありたいと思います。
LGエレクトロニクスの製品は、こだわったスペックをいち早く市場投入することで「こんな商品が欲しかったんですよ。待ってました!」と熱狂的、圧倒的な支持してくださる方が必ずいる。結果として、長い間、大事に使っていただける製品となり、メーカーにとってこれ以上うれしいことはありません。それが、LGエレクトロニクスの意思が込められた製品ではないかと感じています。
―― ノートPCで金賞を受賞した「LG gram 16Z90P series」で提案されている16:10のディスプレイも、まさにお客様にとっての「待ってました」です。
宇佐美 16:9と16:10では微妙な違いでしかないのではないかと思われるかもしれませんが、実際にお使いいただくと、見やすさや作業効率の高さを実感されるはずです。ディスプレイにおいてもこれまでLGは、バックライトをLEDからLCDへ、画面サイズを4:3から16:9、21:9へと切り替えていく流れもけん引してきました。新しい体験を提供し続ける力、それを検証し続ける姿勢は、LGエレクトロニクスが本来備えているブランド力と言えます。
―― さきほどご指摘されたように、市場ではコロナがそうした気づきへのひとつ大きな契機になったと言えるわけですね。
宇佐美 もともと人間にはこだわりがあります。それが表沙汰になり、はっきりとした価値観として浮き彫りになってきたように思います。「自分はこうしたい」とはっきりと言えるようになり、その結果、テレビもパソコンもプロジェクターも、「お客様がこうしたい」という声が本当によく聞こえるようになって来ました。こんなに如実にユーザー像が浮き彫りになったことはかつてなかったと思います。
LGエレクトロニクスとお客様との関係性を築いているのは、その“こだわり”に対して手を掛けて開発していく製品が提供する体験に他なりません。「LGだからやってくれると思っていました」とお客様から声が返ってくる機会も本当に増えています。常にこだわり続けていくブランドとしてお客様に認識いただくことで、買い替え時にもまたLGをご指名いただけるサイクルが生まれてくると確信しています。
VGP2021 SUMMER受賞一覧はこちら
マーケティング統括責任者
宇佐美夕佳氏
うさみゆか Yuka Usami
プロフィール/FMCG(Fast Moving Consumer Goods)業界にてブランドマネージャー、マーケティングマネージャーを経て、広くマーケティング分野に従事。新規事業の立ち上げを数多く経験した。2008年より家電業界に転身。「お客様の経験価値を高める」「本質を追い求める」ことをモットーにコミュニケーションストーリーを開発、提案し続けている。
■主役はあくまでコンテンツ
―― 有機ELテレビの世界シェアNo.1であり、現在ではテレビ市場をけん引する立場にありますが、「VGP2021 SUMMER」では有機ELテレビ「G1シリーズ」が特別大賞、そして、同シリーズにも採用される新世代パネル「OLED evo」が企画賞を受賞しました。おめでとうございます。
宇佐美 ありがとうございます。G1シリーズについては実は、本当にギリギリのタイミングでのエントリーでした。皆さんにお見せするために、日本向けのサンプルとして工場に特注し、持ってこられたのが部門賞で金賞もいただいた65インチの「OLED 65G1PJA」です。当時まだ55インチのモデルも準備できていない状況で、チューニング作業にはおよそ1カ月半を要することから、しんどい追い込みになるかと思われたのですが、2年ほど前からフィードバックしているエンジンの仕上がりが大変良かったことから、われわれの予想に反し、ほぼ調整するところもなく、エンジンチューニングを活かしてエントリーすることができました。
宇佐美 感慨深いですね。LG電子の時代には、どちらかと言えば低価格ラインやOEMのビジネスに力を入れていて、LGエレクトロニクスとしてコンシューマー向けプロダクトに本腰を入れて取り組み始めたのはモバイルが約15年前、テレビが約10年前に過ぎず、他社に比べればまだまだ若いブランドだと認識しています。製品に対して高い視点を持つ日本市場で戦い抜いていくことに、LGエレクトロニクスのブランド力や製品力を向上していく上で大きな意義があると考え取り組んで参りましたが、その10年で培ってきたすべてのことを、今回のG1シリーズを筆頭に、今日のテレビの製品開発に活かしていく態勢を築き上げることができました。
―― チューニングにも時間がかからないということは、土台がしっかり完成され、日本市場向けに調整する手間が、今はもう極力少なくなっているわけですね。
宇佐美 エンジニアとも話をしたのですが、「10年間やってきたことがしっかり入っている」というのが共通したインプレッションです。これは凄く大きなことで、10年前ならばある程度手を入れなければ、なかなかいい仕上げにならなかったものが、今では一定以上のクオリティをもって世界中で展開ができており、LGの大きな強みとなっています。
―― 審査会では、新世代パネル「OLED evo」はもちろん、制御する高画質プロセッサーともども昨年から一気にレベルアップされていると大変高く評価されました。さらに、御社ならではの壁面にぴったり密着して設置できる「ギャラリーデザイン」の提案など、常に一歩先を行く技術力が改めて注目を集めています。
宇佐美 LGエレクトロニクスは映像技術のリーディングカンパニーとしてこの10年、常に新しい技術を、しかも、高額な上位ラインナップに限定されることなく、すべてのお客様が公平に手にできるように提供してきたと自負しています。例えば、評論家の皆さんに見ていただく際にも、そのためにチューニングを施すことはいくらでもできてしまいますし、10年前には実際にそうした文化が残っていました。しかし今では、評論家の皆様が見てご評価いただいたものと、一般のお客様が手にしたものはまったく同等のもの。それが当たり前のことであり、日本で評価された画質が世界中で手に入れられることは、間違いなくLGエレクトロニクスのブランド力となっています。
―― 有機ELテレビの世界シェアNo.1としての強みはどのように活かされているのですか。
宇佐美 グループ会社で生産した有機ELパネルの素性をそのままに、美しい映像を出してあげるにはどういう調整が必要なのかを一番知り尽くしておりますが、極論、余計なことは必要ないということ。テレビ市場では最近、画質至上主義に走り過ぎて、余計な映像処理をされるケースが少なくないように感じていますが、そうした点も今後、削ぎ落す方向に向かっていくのではないかと思っています。
映像も音も、LGエレクトロニクスでは素の良さをそのまま出すところに軸足があります。例えば、「AIサウンド」は作り手が意図する音をそのまま表現するために、製作者があえて入れているノイズや環境音は省いたりせず、しっかりそのまま残すようにしています。ここが他社との大きな違い。素の良さをそのまま活かそうと素直に取り組めるのはひとつの強みと言えます。4Kや8Kも、いかに人間の目に近い映像を出せるのかを追い続きてきたものであり、「リアリティ=加工」ではありません。素の良さをどれだけ引き出せるかはとても大事。主役はテレビではなく、あくまでコンテンツです。
■LGならではの「ギャラリーデザイン」でピタッと壁に密着
―― G1シリーズを市場導入され、お客様や流通からの手応えはいかがですか。
宇佐美 これまで10年間、テレビ事業を手掛けてきましたが、G1シリーズでは「こんな数字は見たことがない!」と思わず目を丸くするような、過去最大の予約をいただくことができました。本当にありがたかったと同時に、大きな期待に応えていかなくてはと身の引き締まる思いです。65インチと55インチを展開しているのですが、大きさに対する抵抗感は昨年辺りから一気になくなってきていて、ベゼルの薄型化や脚の置き方、壁掛けの提案など、各社の工夫に満ちた取り組みも奏功していると言えます。
―― 大型化に伴い、家庭での設置の仕方は重要なポイントとなりますが、御社ではさきほどの審査会の話にも出てきた「ギャラリーデザイン」を提案されています。
宇佐美 これまでの壁掛けは金具も大きく、その分の厚みがテレビと壁との間に隙間となっていましたが、ギャラリーデザインは、専用の金具を使用することで、テレビを壁に本当にピタッと完全に密着して設置することができます。例えばG1シリーズの65インチなら、わずか1.9oのテレビの薄さの中に、壁掛けに必要となるパーツがすべて納められています。これは、LGグループ内で部材から一貫して調達できる垂直統合の強みが活かされたもので、他にはなかなか真似できないLGエレクトロニクスならではのアピールポイントのひとつと言えます。
―― 先日、開催されたテレビ購入者を対象にした「すっと。応募キャンペーン」では、3つのプレゼントの選択肢のひとつとして「壁掛け工事費50,000円分」が用意されていましたが、応募状況はいかがだったのですか。
宇佐美 他の2つが「LGサウンドバー SN7CY +イヤホンHBS-FN7」「Xbox Series X」でしたが、壁掛け工事費を選ばれたお客様が大変多かったですね。コロナ禍も相俟ってDIYで壁掛けされる方も増えていて、LGエレクトロニクスではそうしたニーズにいち早くお応えして、ご自身で壁掛けできるようガイド付きで壁掛け金具を販売しています。
―― テレビ周りではサウンドバーが好調に推移するなど、大画面化が進むに伴い、“テレビの音”に対する注目も高まっています。
宇佐美 現在、量販店の売り場で音まできちんと聴かせることは大変難しい環境にありますから、テレビを選ぶ際には、「映画」「音楽」「スポーツ」などの求めている音声モードが備えられているか、あるいは、音声をチューニングすることができるかを、確認されることが賢明だと思います。
LGエレクトロニクスの場合は、他社に先駆けてドルビーアトモスに対応しており、現在は価格を重視してお求めになられるローエンドのモデルを除けば、どのモデルを購入いただいても、ドルビーアトモスの立体音響を楽しむことができるのが大きな特長となっています。また、G1シリーズではワイヤレス伝送規格「WiSA」にも他社に先駆けて対応しており、音にこだわるお客様に対し、スピーカーの接続性を高める取り組みにも力を入れています。
■オーディオビジュアルの楽しみ方は十人十色
―― 7月8日にはQNEDを搭載した新基準の液晶テレビ“LG QNED MiniLED”「75QNED90JPA」が発売されました。
宇佐美 液晶のもうひとつ先にある時代がいよいよ幕を開けました。MiniLEDバックライト、量子ドットテクノロジー、ナノセルテクノロジーの3つの技術を組み合わせた、新しい視聴体験を提供する、液晶テレビの頂点とも言えるモデルになります。
LGエレクトロニクスは、MiniLEDバックライトと量子ドットテクノロジーに加え、色の純度を高めるナノセルテクノロジーが活かされていることが大きな特長で、色のグラデーションが非常に豊富になっています。主に日中のリビングなど明るい環境で楽しみたい方にはQNEDを、映画に代表されるしっとりとしたコンテンツを楽しみたい方には有機ELのG1シリーズをお薦めします。
―― これまでの液晶は有機ELより格下であるといった常識が払拭され、用途に応じて最適なものが選べるわけですね。
宇佐美 発表会のときにも隣に有機ELテレビを並べてお見せしました。輝度ではQNEDが明らかに優っており、パッと見た目の明るさを求める方であればQNEDに目が留まるのではないでしょうか。これまでの液晶は、大型化すると画素が粗くなると言われることもありましたが、LGは大型クラスでも美しさを堪能できる4K液晶として、86インチのモデルも用意しています。
―― 御社はプロジェクターの分野でも活躍されており、今回も4KレーザープロジェクターのLG CineBeam「HU810PB」が金賞を受賞していますが、映像の楽しみ方はますます広がっていきますね。
宇佐美 お客様にとって、楽しみ方の選択肢はあればあるほどうれしいはずです。プロジェクター市場も昨年から凄くよく動いていて、会社や学校にある機材とのイメージをすっかり脱却しました。ティーンエージャーや20代の若い方が、スマホやPCとつなげて壁に投影して楽しんでいます。スマホで撮った写真やムービーを、アプリで簡単に編集して作品作りも楽しめますから、作品を共有、お披露目できる場所としてもプロジェクターが選ばれています。オーディオビジュアルの楽しみ方は本当に十人十色ですね。
テレビも最近では、多くの方が映像配信やユーチューブの動画コンテンツを当たり前のように楽しまれていますが、LGエレクトロニクスでは他社に先駆けて2012年からスマートテレビを市場導入しています。PCやスマホに慣れ親しんだ方なら、手軽にテレビをスマートに使いこなすことができるマジックリモコンを提唱し、当時から大変高い評価をいただきました。ちなみに、プロジェクターで超短焦点のモデルを日本に初めて導入したのもLGエレクトロニクスになります。
■審美眼を持つお客様の声に応える
―― 後半戦へ向けての意気込みをお願いします。
宇佐美 コロナを通して家での楽しみ方のバリエーションは確実に広がりました。改めて生活軸を見直された方もあれば、価値観が随分と変わってしまった方もいらっしゃいます。そうしたなかでひとつ見逃せないのは、きちんと審美眼を持ち、自分軸で判断できるお客様が大変多くなっていることです。その結果、わたしたちメーカーの声が、以前にも増してお客様へよく届くようになってきました。
LGエレクトロニクスは、まさにそうしたお客様からも高い支持をいただいており、ご自身で比較検討し、実際に商品を見て、納得して買いものをされています。LGエレクトロニクスの商品を選んでいただけるお客様の気持ちに真摯にお応えするためにも、さらに貪欲に製品開発を進め、満足できる製品をお届けして参ります。せっかく気に入って購入いただいたのですから、ぜひ長く使っていただきたい。そのためのサービス体制を含め、“安心してお使いいただけるLG”でありたいと思います。
LGエレクトロニクスの製品は、こだわったスペックをいち早く市場投入することで「こんな商品が欲しかったんですよ。待ってました!」と熱狂的、圧倒的な支持してくださる方が必ずいる。結果として、長い間、大事に使っていただける製品となり、メーカーにとってこれ以上うれしいことはありません。それが、LGエレクトロニクスの意思が込められた製品ではないかと感じています。
―― ノートPCで金賞を受賞した「LG gram 16Z90P series」で提案されている16:10のディスプレイも、まさにお客様にとっての「待ってました」です。
宇佐美 16:9と16:10では微妙な違いでしかないのではないかと思われるかもしれませんが、実際にお使いいただくと、見やすさや作業効率の高さを実感されるはずです。ディスプレイにおいてもこれまでLGは、バックライトをLEDからLCDへ、画面サイズを4:3から16:9、21:9へと切り替えていく流れもけん引してきました。新しい体験を提供し続ける力、それを検証し続ける姿勢は、LGエレクトロニクスが本来備えているブランド力と言えます。
―― さきほどご指摘されたように、市場ではコロナがそうした気づきへのひとつ大きな契機になったと言えるわけですね。
宇佐美 もともと人間にはこだわりがあります。それが表沙汰になり、はっきりとした価値観として浮き彫りになってきたように思います。「自分はこうしたい」とはっきりと言えるようになり、その結果、テレビもパソコンもプロジェクターも、「お客様がこうしたい」という声が本当によく聞こえるようになって来ました。こんなに如実にユーザー像が浮き彫りになったことはかつてなかったと思います。
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