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公開日 2016/06/21 19:39
ボーズ、初のNC+Bluetoothヘッドホン「QC35/QC30」披露。“クワイエット道”に邁進し38年
ただBluetoothを搭載しただけではない
ボーズ(株)は、ノイズキャンセリングとBluetoothに両対応したヘッドホン「QuietComfort 35 wireless headphones(QC35)」(関連ニュース)の日本発売が6月24日に迫ったことにあわせ、プレス向けの製品説明会を開催した。
現地では、QC35と同時に発表されたイヤホン3機種も含めて、2016年の新製品4モデルが披露された。
ラインナップはQC35のほか、同じくノイズキャンセリング機能とBluetooth機能を両方搭載するイヤホン「QuietControl 30 wireless headphones(QC30)」(関連ニュース)、スポーツ向けイヤホン「SoundSport wireless headphones」(関連ニュース)、拍数計内蔵イヤホン「SoundSport Pulse wireless headphones」(関連ニュース)だ。QC35とSoundSportは6月24日に発売される予定で、QC30とSoundSport Pulseは9月の発売が告知されている。
特に注目度が高かったのは、QC35とQC30。創業者であるアマー・G・ボーズ博士が航空機に搭乗した際にノイズキャンセリング技術を考案したのをきっかけに、ボーズはヘッドホンリスニングにおける“Quiet(静けさ)”を追求してきたわけだが、ついにQC35/QC30でそこにワイヤレス機能が追加された形だ。ノイズキャンセリング機能とBluetooth機能を両方搭載するヘッドホン/イヤホンは、ボーズ初となる。
今回のプレス向け説明会では、米Bose CorporationからHeadphone Lead Research Engineerであるダン・ゲイジャー氏が来日し、ボーズがヘッドホンで“Quiet(静けさ)”を追求してきた歩みと、新製品QC35/QC30の魅力について紹介を行った。
■ノイキャン技術の開発で、ボーズの“クワイエット道”に邁進した38年間
ゲイジャー氏は、マサチューセッツ工科大学にて制御システムやアナログ回路設計の研究に従事し、1981年に電気工学の理学士号と理学修士号を取得している人物。1980年にボーズに入社してからは、主にアコースティック・ノイズキャンセリングの開発に携わり、旅客機のパイロット向けや軍用、コンシューマー向けアコースティック・ノイズキャンセリングヘッドセットに向けた電子・音響・システムの設計を担当してきた。自身も音響関連を含めて特許を25個所有している。
ボーズにおけるノイキャン技術開発の黎明期から携わってきたゲイジャー氏は、ボーズ博士が飛行機に乗っている最中にノイズキャンセリング技術のアイデアが考案された歴史を振り返った。
「ボーズのノイキャン技術開発の始まりは、1978年4月19日。その日スイスエアーでチューリッヒからボストンへ移動中だったボーズ博士は、当時機内に実装された遮音性の低いヘッドホンを使って音楽を聴いたことがきっかけで、“外から入ってくる騒音と同じノイズをヘッドホンから出すことで、騒音を打ち消せば良い”というアイデアを生みました。その飛行機を降りるとき、既にボーズ博士は、ヘッドホンでその仕組みを具現化する基本の数式を作り上げていました」。
ゲイジャー氏は、「この博士の経験から38年間、ボーズは“Quiet(静けさ)”を突き詰める旅路を進んできました」と述べた。そして、自身が日本の合気道を学んでいることを引き合いに、「合気道では、一心に稽古して精進します。ボーズもそう。ノイズを克服しようと一心にやってきました。これを合気道ならぬ“クワイエット道”と言っても良いでしょう。合気道は敵の“気”をコントロールして封じるものですが、ボーズヘッドホンのフィードバックテクノロジーも外のノイズをコントロールして打ち消します」と、独自理論でボーズの物作りと日本的な精神との親和性について熱弁。「フィードバックテクノロジーはノイズに対して合気道をぶつけるようなもの。言うなれば、ボーズ博士は“クワイエット道”のマスターです」。
ボーズのノイズキャンセリングヘッドホンは、最初は軍事分野にフォーカスし、パイロット向けに展開されていた。ゲイジャー氏は「市場を絞ったので利益は上げられましたが、事業は限定的になってしまいました」と振り返る。「私たちとしてはプロダクトの良さをもっと広めたく、さらに飛行機でより良く音楽を楽しめるようにしたいという気持ちもまだ叶えられていませんでした」との思いから、一般向けのノイズキャンセリングヘッドホンの開発がスタートしたという。
ゲイジャー氏は一般向けのノイズキャンセリングヘッドホン開発について「ただ“Quiet(静けさ)”を突き詰めるだけではなく、装着性も含めた製品全体のバランスを重視しました」と説明。Active、Passive、Comfortの3点をキーワードに、それぞれのバランスを取ったとのことで、「このバランスこそが、ボーズの“QuietComfort”の神髄」と語った。このとき、低域の再現性を高めてリスニングの質を上げる「TriPortテクノロジー」も登場している。
軍用ではなく一般向けにボーズのノイズキャンセリングヘッドホンが展開されたのは、1999年。はじめはBtoBでアメリカン航空に導入された。ゲイジャー氏は、一般的にあまり知られていない話として「実はボーズ博士は最初、ノイズキャンセリングヘッドホンをコンシューマーに直接販売しても成功しないという考えでした」と明かした。
それを、現在の同社のトップであるボブ・マレスカ氏らが、一般消費者に直接販売する可能性を見出し、やっと2000年に「QC1」がコンシューマー市場に登場することになったのだという。
■「ノイキャンモデルにただBluetoothを搭載しただけではない」
ボーズでは、コンシューマー向けノイズキャンセリングヘッドホンの第一号機であるQC1以降、外側にもマイクを搭載してノイズの消音効果を強化した「QC15」、アクティブノイズキャンセリング機能を初めて搭載したイヤホン「QC20」などの注目機種を展開してきた。今回のQC35/QC30も、上述の通り同社初のノイキャン+Bluetooth両対応モデルとして、ヒストリカルな位置づけの製品となる。
2機種ともBluetoothの性能としては、NFCにも対応することで、簡単にペアリングが行えるようにしている。専用アプリ「Bose Connect」を使うことで、接続機器の切り替え作業なども可能。なお、aptXはサポートしていない。これについて同氏は「aptXの可能性は考えましたが、私たちの知るユースケースとしては大きな利点がないと判断して非搭載としました。ソースデバイスが出揃っていないことも背景にあります」と説明した。また、QC35で約20時間、QC30で約10時間というバッテリーの長時間持続を実現したことも特徴だ。
さらにゲイジャー氏によれば、ノイズキャンセリングモデルをワイヤレス化にするためには、ただBluetoothチップを載せれば良いというものではなく、ノイズキャンセリング回路とBluetooth回路を上手く組み合わせる必要があり、その点で試行錯誤したという。
ゲイジャー氏はQC30について「内部の回路設計から考え直しています。これまでのQC25の強みはそのままに、ワイヤレス化を実現した製品です。ワイヤレス化したからノイキャン性能が低くなるということはなく、ワイヤレスでも、これまでの有線ヘッドホンと同等のノイズキャンセリング性能を持っています」とコメントした。
■ノイキャンレベルを12段階で調整できるQC30は「スペシャルな製品」
また、9月発売を予定しているQC30に関して同氏は、「個人的にスペシャルな製品」とアピール。ワイヤレス化したことで新しくネックバンド型を採用しており、外観がブラッシュアップされている。また、前世代モデルの「QC20」に搭載されたイヤーチップ「StayHear +」によって、耳への密閉性や安定性を確保。ゲイジャー氏は「一日着けていても、着けているのを忘れるくらいの着け心地の良さ」と表現した。
さらに、本機はノイズキャンセリングとBluetoothを両方搭載するだけではなく、ノイキャンレベルを12段階で調整できるようにしていることが大きな特徴。これまで“QuietComfort”だった製品名を、本機だけは“QuietContorol”に変更しているほどだ。
ゲイジャー氏は、QC30が搭載するノイキャン技術について「外のノイズレベルをただ上げ下げするだけではなく、信号処理を複雑に変えながら調整します」と説明。外側マイクが一定の周波数帯のノイズを多くしたり、反対に別の周波数帯ではノイズを抑えて消音するといった調整を行うという。
本機の可変ノイキャン機能により、音楽の音量はそのままに、周囲の音をどの程度取り込むのかをユーザーが任意で調節することが可能になった。設定は専用アプリ「Bose Connect」を使う。12段階のレベルは「Quiet」「Mezzo」「Aware」の3段階に大きく分けられ、最高レベルが「Quiet」。これを一番下の「Awere」に設定すると、最も高い周波数帯と最も低い周波数帯をキャンセルし、環境音が聞こえやすくなる。真ん中に位置する「Mezzo」は、頭部の平均的な音響特性をもとにした設定で、最適でフラットな聞こえ方を狙っている。
なお自身でもQC30を使用しているというゲイジャー氏は、最後に、「コンサートのときにQC30を装着して音楽を聴くと、自分が心地良いと思うレベルに調整しながら演奏を楽しめますよ」と、QC30のお気に入りの使い方を紹介してスピーチを締めくくった。
現地では、QC35と同時に発表されたイヤホン3機種も含めて、2016年の新製品4モデルが披露された。
ラインナップはQC35のほか、同じくノイズキャンセリング機能とBluetooth機能を両方搭載するイヤホン「QuietControl 30 wireless headphones(QC30)」(関連ニュース)、スポーツ向けイヤホン「SoundSport wireless headphones」(関連ニュース)、拍数計内蔵イヤホン「SoundSport Pulse wireless headphones」(関連ニュース)だ。QC35とSoundSportは6月24日に発売される予定で、QC30とSoundSport Pulseは9月の発売が告知されている。
特に注目度が高かったのは、QC35とQC30。創業者であるアマー・G・ボーズ博士が航空機に搭乗した際にノイズキャンセリング技術を考案したのをきっかけに、ボーズはヘッドホンリスニングにおける“Quiet(静けさ)”を追求してきたわけだが、ついにQC35/QC30でそこにワイヤレス機能が追加された形だ。ノイズキャンセリング機能とBluetooth機能を両方搭載するヘッドホン/イヤホンは、ボーズ初となる。
今回のプレス向け説明会では、米Bose CorporationからHeadphone Lead Research Engineerであるダン・ゲイジャー氏が来日し、ボーズがヘッドホンで“Quiet(静けさ)”を追求してきた歩みと、新製品QC35/QC30の魅力について紹介を行った。
■ノイキャン技術の開発で、ボーズの“クワイエット道”に邁進した38年間
ゲイジャー氏は、マサチューセッツ工科大学にて制御システムやアナログ回路設計の研究に従事し、1981年に電気工学の理学士号と理学修士号を取得している人物。1980年にボーズに入社してからは、主にアコースティック・ノイズキャンセリングの開発に携わり、旅客機のパイロット向けや軍用、コンシューマー向けアコースティック・ノイズキャンセリングヘッドセットに向けた電子・音響・システムの設計を担当してきた。自身も音響関連を含めて特許を25個所有している。
ボーズにおけるノイキャン技術開発の黎明期から携わってきたゲイジャー氏は、ボーズ博士が飛行機に乗っている最中にノイズキャンセリング技術のアイデアが考案された歴史を振り返った。
「ボーズのノイキャン技術開発の始まりは、1978年4月19日。その日スイスエアーでチューリッヒからボストンへ移動中だったボーズ博士は、当時機内に実装された遮音性の低いヘッドホンを使って音楽を聴いたことがきっかけで、“外から入ってくる騒音と同じノイズをヘッドホンから出すことで、騒音を打ち消せば良い”というアイデアを生みました。その飛行機を降りるとき、既にボーズ博士は、ヘッドホンでその仕組みを具現化する基本の数式を作り上げていました」。
ゲイジャー氏は、「この博士の経験から38年間、ボーズは“Quiet(静けさ)”を突き詰める旅路を進んできました」と述べた。そして、自身が日本の合気道を学んでいることを引き合いに、「合気道では、一心に稽古して精進します。ボーズもそう。ノイズを克服しようと一心にやってきました。これを合気道ならぬ“クワイエット道”と言っても良いでしょう。合気道は敵の“気”をコントロールして封じるものですが、ボーズヘッドホンのフィードバックテクノロジーも外のノイズをコントロールして打ち消します」と、独自理論でボーズの物作りと日本的な精神との親和性について熱弁。「フィードバックテクノロジーはノイズに対して合気道をぶつけるようなもの。言うなれば、ボーズ博士は“クワイエット道”のマスターです」。
ボーズのノイズキャンセリングヘッドホンは、最初は軍事分野にフォーカスし、パイロット向けに展開されていた。ゲイジャー氏は「市場を絞ったので利益は上げられましたが、事業は限定的になってしまいました」と振り返る。「私たちとしてはプロダクトの良さをもっと広めたく、さらに飛行機でより良く音楽を楽しめるようにしたいという気持ちもまだ叶えられていませんでした」との思いから、一般向けのノイズキャンセリングヘッドホンの開発がスタートしたという。
ゲイジャー氏は一般向けのノイズキャンセリングヘッドホン開発について「ただ“Quiet(静けさ)”を突き詰めるだけではなく、装着性も含めた製品全体のバランスを重視しました」と説明。Active、Passive、Comfortの3点をキーワードに、それぞれのバランスを取ったとのことで、「このバランスこそが、ボーズの“QuietComfort”の神髄」と語った。このとき、低域の再現性を高めてリスニングの質を上げる「TriPortテクノロジー」も登場している。
軍用ではなく一般向けにボーズのノイズキャンセリングヘッドホンが展開されたのは、1999年。はじめはBtoBでアメリカン航空に導入された。ゲイジャー氏は、一般的にあまり知られていない話として「実はボーズ博士は最初、ノイズキャンセリングヘッドホンをコンシューマーに直接販売しても成功しないという考えでした」と明かした。
それを、現在の同社のトップであるボブ・マレスカ氏らが、一般消費者に直接販売する可能性を見出し、やっと2000年に「QC1」がコンシューマー市場に登場することになったのだという。
■「ノイキャンモデルにただBluetoothを搭載しただけではない」
ボーズでは、コンシューマー向けノイズキャンセリングヘッドホンの第一号機であるQC1以降、外側にもマイクを搭載してノイズの消音効果を強化した「QC15」、アクティブノイズキャンセリング機能を初めて搭載したイヤホン「QC20」などの注目機種を展開してきた。今回のQC35/QC30も、上述の通り同社初のノイキャン+Bluetooth両対応モデルとして、ヒストリカルな位置づけの製品となる。
2機種ともBluetoothの性能としては、NFCにも対応することで、簡単にペアリングが行えるようにしている。専用アプリ「Bose Connect」を使うことで、接続機器の切り替え作業なども可能。なお、aptXはサポートしていない。これについて同氏は「aptXの可能性は考えましたが、私たちの知るユースケースとしては大きな利点がないと判断して非搭載としました。ソースデバイスが出揃っていないことも背景にあります」と説明した。また、QC35で約20時間、QC30で約10時間というバッテリーの長時間持続を実現したことも特徴だ。
さらにゲイジャー氏によれば、ノイズキャンセリングモデルをワイヤレス化にするためには、ただBluetoothチップを載せれば良いというものではなく、ノイズキャンセリング回路とBluetooth回路を上手く組み合わせる必要があり、その点で試行錯誤したという。
ゲイジャー氏はQC30について「内部の回路設計から考え直しています。これまでのQC25の強みはそのままに、ワイヤレス化を実現した製品です。ワイヤレス化したからノイキャン性能が低くなるということはなく、ワイヤレスでも、これまでの有線ヘッドホンと同等のノイズキャンセリング性能を持っています」とコメントした。
■ノイキャンレベルを12段階で調整できるQC30は「スペシャルな製品」
また、9月発売を予定しているQC30に関して同氏は、「個人的にスペシャルな製品」とアピール。ワイヤレス化したことで新しくネックバンド型を採用しており、外観がブラッシュアップされている。また、前世代モデルの「QC20」に搭載されたイヤーチップ「StayHear +」によって、耳への密閉性や安定性を確保。ゲイジャー氏は「一日着けていても、着けているのを忘れるくらいの着け心地の良さ」と表現した。
さらに、本機はノイズキャンセリングとBluetoothを両方搭載するだけではなく、ノイキャンレベルを12段階で調整できるようにしていることが大きな特徴。これまで“QuietComfort”だった製品名を、本機だけは“QuietContorol”に変更しているほどだ。
ゲイジャー氏は、QC30が搭載するノイキャン技術について「外のノイズレベルをただ上げ下げするだけではなく、信号処理を複雑に変えながら調整します」と説明。外側マイクが一定の周波数帯のノイズを多くしたり、反対に別の周波数帯ではノイズを抑えて消音するといった調整を行うという。
本機の可変ノイキャン機能により、音楽の音量はそのままに、周囲の音をどの程度取り込むのかをユーザーが任意で調節することが可能になった。設定は専用アプリ「Bose Connect」を使う。12段階のレベルは「Quiet」「Mezzo」「Aware」の3段階に大きく分けられ、最高レベルが「Quiet」。これを一番下の「Awere」に設定すると、最も高い周波数帯と最も低い周波数帯をキャンセルし、環境音が聞こえやすくなる。真ん中に位置する「Mezzo」は、頭部の平均的な音響特性をもとにした設定で、最適でフラットな聞こえ方を狙っている。
なお自身でもQC30を使用しているというゲイジャー氏は、最後に、「コンサートのときにQC30を装着して音楽を聴くと、自分が心地良いと思うレベルに調整しながら演奏を楽しめますよ」と、QC30のお気に入りの使い方を紹介してスピーチを締めくくった。