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公開日 2018/05/22 10:01

ソニー、20年度までの中期経営で「人に近づく」。金融以外で最大8,080億円の営業利益を目標に

エレキ事業を「キャッシュカウ」に
編集部:風間雄介
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ソニー(株)は本日、経営方針説明会を開催。2018年度から2020年度までの3年間の中期経営計画を発表した。

同社社長兼CEOの吉田憲一郎氏は経営方針について、「第3次中期経営計画」という名称にすると発表。これは、前CEOの平井一夫氏が掲げていた「感動を届ける」というソニーのミッションは変わらない、ということを表現する意味もあるという。

ソニー(株)社長兼CEOの吉田憲一郎氏

「感動を届ける」というソニーのミッションは変わらない、と説明

新経営方針の中心となるキーワードは「人に近づく」ということ。ユーザーに近いDirect to Consumer(DTC)サービスと、クリエーターに近いコンテンツIPを強化。さらに、ソニーブランドのエレクトロニクスを、安定的に高いレベルのキャッシュフローを作れる、いわゆるキャッシュカウ(稼ぎ頭)事業にすることを目指す。

Direct to Consumer(DTC)サービスとコンテンツIPを強化

ソニーブランドのエレクトロニクス事業を稼ぎ頭に

またCMOSイメージセンサーについても、イメージング用途での世界ナンバーワンを維持し、センシング用途でも世界ナンバーワンとなる、と宣言した。

イメージセンサーはもちろん、センシングでも世界ナンバーワンになると宣言

なお、金融事業とその他事業を除いた、エレクトロニクス事業とエンタテインメント事業の、2020年度の営業利益目標は、各分野ごとに数字が出され、合算すると下限が6,380億円、最大8,080億円。前提為替レートは1ドル105円前後、1ユーロ115円前後。

なお、金融事業とその他事業の、2020年度の営業目標は、本日は開示されなかった。このため、ソニー全体としての営業利益目標も算出できない。このことについて吉田氏は、「3年後の数字を出すのは大事だが、それをすると、経営がこの3年間にとらわれることになる」と説明。より長期的な視点で経営に取り組む考えを示した。

なお、経営方針で明確に数値目標として掲げたのは営業キャッシュフローとROE(連結株主資本利益率)で、営業キャッシュフローについては2018年度から2020年度までの3年間に、累計2兆円以上のキャッシュフローを生むことを目標とする。また、ROEについては、10%以上を維持することを目指していく。

3年間の累計営業キャッシュフロー2兆円を目標とする

第3次中期経営計画の数値目標

投資については、設備投資は3年間累計で約1兆円を見込む。このうち大半がイメージセンサー向けの投資となる。また戦略投資については、重点領域をコンテンツIPと技術補完と位置づけた。本日発表された「EMI Music Publishing」の連結子会社化(関連ニュース)や、スヌーピーへの投資もその一環だという。

設備投資に約1兆円使う。ちなみに研究開発投資は、年間5,000億円程度の現在とあまり変わらない水準を想定しているという

スヌーピーやEMIなど、コンテンツIPへの投資を活発に行っている

「謙虚かつ長期的な視点で物事に取り組む大切さ」

さて、ここからはもう少し詳しく、吉田氏が語った中期経営計画の内容について見ていこう。

まず吉田氏は、井深大、盛田昭夫といった歴代経営者に名を連ねることの意味の大きさについて、自ら言及した。

同氏はこれらの経営者に直接接したことはほとんど無いと言うが、一度だけ、吉田氏がニューヨークに駐在していた1993年に、盛田昭夫氏と会ったことがあるという。そのときの写真も、会場の大きなスクリーンに映し出された。

盛田氏の長期的な視点に立った言葉が忘れられない、と吉田氏

その時期の盛田氏は「もう一度謙虚に米国に学ぶべきだ」と主張し、危機感をあらわにしていたとのことだが、吉田氏は「いまになって思えばその危機感は正しく、それは『インターネット』の登場だった」と述べた。「その翌年の1994年にネットスケープ社が登場し、瞬く間にインターネットが世界を席巻した。21世紀に入るとソニーの経営にも大きな影響を与えた」。

こういった事例を引きながら、吉田氏は、目先の利益や繁栄にとらわれるのではなく、「謙虚かつ長期的な視点で物事に取り組む大切さを実感している」と語った。

エレクトロニクス事業を稼ぎ頭に

事業領域別でいうと、吉田氏はソニーの事業を「エレクトロニクス」「エンタテインメント」「金融」の3つに大別。それぞれについて説明した。

まずエレクトロニクス事業は、クリエーターとユーザーのあいだにある「撮る」「録る」「再生する」「観る」「聴く」ものを扱うと、改めて紹介。そのあいだに生まれる「感動」を提供するハードウェアを作っていく。

エレクトロニクス事業ではクリエーターをユーザーを「つなぐ」と改めて紹介

その上で吉田氏はソニーブランドのエレクトロニクスを「ブランデッドハードウェア」という名称で規定。このブランデッドハードウェアは、ホームエンタテインメント&サウンド(HE&S)、イメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)、モバイルコミュニケーション(MC)の3つのエレクトロニクス事業で構成される領域と定義する。

前述したように同氏は、このブランデッドハードウェアを、安定したキャッシュフローを生み出す、持続的なキャッシュカウ(稼ぎ頭)事業にすると位置づける。

すでにテレビなども黒字化した。カメラ事業も好調に推移している。またオーディオ事業も、2017年度は20年ぶりに増収に転じたという。

オーディオ事業は20年ぶりに増収に転じた

こういった中で不調なのがモバイル事業で、昨年度は減損処理も行った。さらに、今年度も赤字を見込んでいる。このことについては吉田氏も「重く受け止めている」とした一方、この3カ年以内に黒字化へ持っていくという。

さらに吉田氏は「中長期的に考えると、モバイルという事業のレバーを持っておくことが、ブランデッドハードウェア事業全体の安全性につながる」とも説明。5GやIoTなどが進展する中、その技術を自社内に持っておくことの必要性を説いた。

モバイル事業、特にスマートフォン事業の立て直しが急務だ

なお、PlaysStationビジネスを展開するゲーム&ネットワークサービス部門は、ブランデッドハードウェアには含まれず、別枠となる。この分野では月間アクティブユーザー数が8,000万を超えたPlayStation Network(PSN)をよりいっそう成長させることを目指し、PS Plusの会員数拡大、PS VRやPS Now、PS Video、PS Musicなど、様々なサービスの充実も図っていく。

ゲーム事業では、PlayStation Network(PSN)をよりいっそう成長させる

この3カ年内に投入が予想される、次期Playstation関連の投資についての質問には、「ゲームを作る人のクリエイティビティーを大切にしたプラットフォームを作りたい」と説明するにとどめた。

音楽や映画などエンターテインメントはコンテンツIPを強化

音楽分野の基本戦略は、コンテンツIPの強化だ。音楽市場はストリーミングが急速に伸びているが、このストリーミング市場の伸びから得られる事業機会を最大化するため、コンテンツIPの質と量を強化していく。

エンタテインメント事業の戦略は「コンテンツIPの強化」「メディアネットワーク事業の展開」の2つ

音楽では、これまでSony/ATVとSMEをあわせ、230万曲を超える楽曲の権利を管理していた。これに加え、EMI Music Publishingを取得したことで、200万を超える楽曲数の著作権も管理でき、「名実ともに世界ナンバーワンの音楽出版社となった」と吉田氏は宣言。事業規模が大きく拡大する。

また「Fate」を中心とするアニメIPも、音楽分野の重要な資産と位置づけ、これらについても引き続き強化していく。

映画分野については、過去のIPを再活性化することなどを行っていく。その成果として紹介されたのが「ジュマンジ」だ。またインド事業も強化。インドについて吉田氏は「将来的には世界最大の人口を抱える国になる」と述べ、インドを中心としたメディアネットワークの展開を行っていくという。

過去のIPの再活性化にも積極的に取り組む

半導体事業は、引き続きCMOSイメージセンサーに注力する。吉田氏はCMOSイメージセンサーが、自動運転やIoT、AIなどの今後の発展領域におけるキーデバイスと改めて強調。このイメージング領域でのナンバーワンを堅持すると同時に、センシングでもグローバルナンバーワンを目指す。まずはスマホ向けからスタートし、今後は車載センシングなども育てていく考えだ。

金融事業についての説明はあまり詳しく行われなかったが、吉田氏は「継続的に高収益を実現し、ソニーグループの安定的な利益基盤の一つ」と説明。フィンテックなどの活用で、さらに「お客様に近づくことを目指す」という。

ソニーと社会貢献

吉田氏が最後に紹介したのは、「ソニーと社会価値」だ。同氏は「経済価値を創出するだけでなく、地球環境も含めた社会価値での貢献を見据え、経営に取り組んでいく」ということを改めて説明。

井深大の言葉。「社会的使命を自覚して 思い切り働ける 安定した職場を こしらえる」

具体的にソニーが貢献できることとして、「環境への貢献」のほか、「自動運転時代の安全への貢献」「教育への貢献」などを挙げ、「持続的な社会価値と高収益の創出を目指す」とした。

ソニーは様々なレベルやカテゴリーの教育にも貢献できる、と説明した

加えて環境や人権などに対する取り組みを、長期的な視点でサプライチェーン全体にわたって継続していくことにも触れた。

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