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公開日 2015/12/11 15:10

ビクタースタジオがセレクト!エンジニアが唸るこの1枚 −「こううたう/柴咲コウ」

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こううたう/柴咲コウ

WAV/FLAC 96kHz/24bit
http://hd-music.info/album.cgi/3635


今回のセレクトは「こううたう/柴咲コウ」。なんともセンスのいいネーミングのこの作品は、女優でありアーティストでもある彼女の、透明感溢れ透き通るような伸びのある唄声で、名曲や思い出ある楽曲を収めたカバーアルバム。ハイレゾマスターは96kHz/24bit、全体を通して優しさや柔らかさに包まれる絶妙な仕上がりだ。

音楽的な部分もさることながら、今回本作を紹介したい最大の理由は、このアルバムに収録されている「桜坂」のCDバージョンが、先日発表された「日本プロ音楽録音賞」のポップス部門において、今年度(2015年度)の最優秀賞を受賞したことにある。まさに受賞したての“ほっかほか”の話題作だ。

「日本プロ音楽録音賞」とは、その年に発売された一番音の良い楽曲を、音楽ジャンルや発売されたメディア等の幾つかの部門にカテゴライズして選定・表彰するもの。作品やアーティストを対象とする賞は幾つかあるが、エンジニアリングのみにスポットをあてるものは国内唯一。若干大げさに言わせて頂くと、日本版の「グラミー賞」に位置する、とても名誉あるものなのだ。

しかも特筆すべきは、最優秀賞を受賞した「桜坂」のオケ編成は、生楽器ではなくほぼ打ち込みということ。楽曲の音場や空気感を表現する要となる生楽器が、この楽曲ではほとんど無い。にもかかわらず圧倒的な音場空間の表現力を持っていたことが、受賞のポイントとなったとのことだ。

なぜそんなことが実現できたのか? それは、打ち込みのパーカッション系をベースに、それぞれの楽器の音色やエコー・リバーブ感、定位等を非常に丁寧につくりこんだからに他ならない。

生楽器の「最上レコーディング力」にのみエンジニアの力量が傾きがちだが、ミックスでのこの演出力こそ、音楽づくりに直接繋がるクリエイティブなセンスであり、エンジニア力の「技」なのである。

CD版で最高の評価を頂いた、そのマスターと同クオリティーのハイレゾ版が悪かろうはずがない。楽曲が本来持っている魅力を、エンジニアの匠の技と絡まって極上の完成度となった本音源、是非とも試聴してみていただきたい。




高桑 秋朝 氏

ビクタースタジオ所属レコーディングエンジニア。

新潟出身のB型。趣味は釣りと車と温泉。専門学校卒業後、1999年に入社。以来、ビクタースタジオ一筋の純粋な「ビクター」叩き上げ。生まれてから一度も怒ったことはないのでは、と思わせる程の超温和な性格。これまでにバンド系、JAZZ、クラシック、大編成劇版等、様々なセッションに参加し、その柔らかさが各所で大人気に。

2010年、第17回日本プロ音楽録音賞にて「アビッド賞」授賞、サウンドメイクでもお墨付きを獲得。現在は、群を抜いた生音取り扱いの匠さをベースに、ポップス、 Rock、アコースティック等、ジャンルを問わず幅広く活躍。マルチな方面でも突出したセンスを発揮する若きベテラン。

独身を満喫する、ビクタースタジオのミドルエンジニア。



<高桑氏からのコメント>

この作品は、新旧さまざまな名曲を柴咲コウさんが歌ったカバーアルバムです。個性豊かなアレンジャー、エンジニアが多数参加し、サウンド面も含めとてもバラエティーに富んだアルバムだと思います。

その中で私は「桜坂」のRec&Mixを担当させて頂きました。

生楽器はW.BassとGGのみで打ち込みが中心のオケですが、谷口尚久さんによるアレンジはシンプルながら緻密に作り込まれ、非常に美しいものでした。

Mixにあたっては、柴咲さんのVocalを中心に、ビート感を出しつつ歌の邪魔をしないリズムトラックのバランス、そして高さと奥行きを感じられるような空間表現を意識して作業にあたりました。特に空間表現において使用するリバーブはとても重要ですが、今回はBricasti社のM7というアウトボードのリバーブをメインに使用しています。

昨今、プラグインのリバーブも素晴らしいものはたくさんありますが、やはり専用設計されたアウトボード機のサウンドは濃密で存在感があり、今回のMixでは重要なポイントになっています。

ハイレゾで聞いて頂く事で、空間表現含め、Mixで意図した表現をより素直に感じて頂けるのではないかと思います。

アルバム全体を通してもそれぞれの楽曲のこだわりをより感じて頂けたら幸いです。

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