[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第100回】“ハイレゾとは何なのか?”− 楽曲制作プロセスからみるハイレゾ考察
■人によっては文句あり?なハイレゾ配信音源とは?
では、「録音から配信までが同じハイレゾフォーマットのまま進められている」文句なしのハイレゾ配信音源に対して、そうではないハイレゾ配信音源、人によっては文句あり?なハイレゾ配信音源とはどういったものだろうか?
もうおわかりだろうが、「録音から配信までが同じハイレゾフォーマットのまま進められて”いない”」ハイレゾ配信音源もあるのだ。詳しい説明は後ほどとして、ぱぱっといくつか例を挙げてみよう。
●アナログマスターテープからハイレゾデジタルデータ化された音源
●デジタル録音データをアップサンプリング&ビット拡張した上でリマスタリング等を施した音源
●デジタル録音データをアナログに戻してからリマスタリング等を施した上でハイレゾデジタルデータ化した音源
つまり「音源制作工程のどこかしらにおいて最終的なハイレゾ配信フォーマットとは異なるフォーマットが入っている」ものがあるということだ。そしてその「異なるフォーマット」は様々。そもそもの録音やリマスタリングの元になるオリジナルマスターが非ハイレゾのデジタルデータである場合もあれば、制作過程でデジタルからアナログへの差し戻しが行われる場合もある。
それぞれに「何かしらの意図」があるわけだが、元データが非ハイレゾのデジタルデータである場合は特に「ニセレゾ」扱いされることも多いように、このあたりは釈然としない方も多いようだ。そしてそう言われて仕方のない音源が実際に混じっている可能性も否定できない。
しかし以降では、そういった様々な制作プロセスそれぞれの「何かしらの意図」、制作において利点となる部分についても説明していくので、それも踏まえた上で「その音源はハイレゾと呼ぶに値するのか?」について考えてみてほしいと思う。
さてその前にここまでの話をいったんまとめておくと、ハイレゾ配信音源はまずは、
●録音から始まってマスター作成まで全てのプロセスがハイレゾで行われてハイレゾマスターが作成されており、ハイレゾ配信されている音源
●録音フォーマットや途中のプロセスのフォーマットは様々だがいずれにせよ最終的なマスターはハイレゾで作成されており、ハイレゾ配信されている音源
のふたつに大別できるということだ。
ここで確認しておいてほしいのは、「ハイレゾ音源と呼ぶに値するか否か」の判断はともかく、そのどちらにしてもその多くは、「マスターそのものをそのまま配信」もしくは「従来のフォーマットよりは格段にマスターに近い状態での配信」であるということ。「ハイレゾ配信」とは別に「スタジオマスター配信」という言葉というか定義もあるが、それはそういう意味だ。
そのことにまず大きな価値がある。それはアナログレコードでもカセットテープでも(CDでも)AAC配信でも得られなかったものであり、音楽ファンやオーディオファンにとって夢の世界だった話が実現したと言える。
なお(CDでも)を()に括ったのには次のような理由がある。時期によっては「そもそもマスターまですべてCDフォーマットで制作されている作品」というのも多くというか無数にあるのだ。その場合、CDに収録されているデータは「スタジオマスター」ほぼそのものと言って差し支えない。
ということで、実は皆様の手元にあるCD作品の中には、そこに収録されているデータは「ハイレゾではない」が「スタジオマスターである」というものもたくさんあるのだ。
次ページ高橋敦がまとめる「ハイレゾ音源制作工程パターン表」公開
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