[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第100回】“ハイレゾとは何なのか?”− 楽曲制作プロセスからみるハイレゾ考察
エンジニアのzAk氏はやくしまるえつこさんのソロ作品「RADIO ONSEN EUTOPIA」と自らもメンバーとして参加している相対性理論「TOWN AGE」において、録音はProToolsでのPCMハイレゾで行い、まずProTools内でミックスを行ったものをアナログで出してアウトボードで処理し、DSDシステムに送ってミックスを完成させるというプロセスを採ったとのこと。そしてそのDSDマスターをマスタリングエンジニアに渡し、そこからCD用のマスターが作成されたという流れのようだ。
実際にこれらの作品はCDで聴いても、僕の感覚としては実に素晴らしい音だ。zAk氏が自身のイメージする音を得るために採用したのであろうその制作プロセスも、その音の素晴らしさの一要因ではあるだろう。ぜひなんとかハイレゾやDSDでも配信してほしいと切に願う。
ところで、「アナログやDSDの感触がほしいんだったら最初からPCMじゃなくてアナログかDSDで録音したらいいんじゃない?」という疑問を持った方がいるかもしれない。しかしそうしないというか、できないのには理由がある。後ほど詳しく説明するのでここでは簡単に言っておくと「DSDは編集性の低さを筆頭に極めて扱いにくい」のだ。
話を戻してそのようにして完成したDSDマスターだが、もちろん理想はそれをそのままDSD配信することだ。ただDSDをネイティブ再生できる再生機はまだまだぜんぜん多数派ではない。そこで配信向けにはDSDマスターからPCMハイレゾに変換したものが提供されている場合も多い。ここは音楽性とかではなく単に現実問題の話だろう。
なお、元データが非ハイレゾの場合はここでも「ニセレゾ」の疑念を持つ方がいるだろうが、それについてもまとめて後述。
次ページ続いて「PCM録音からアナログ経由でPCMマスタリング」
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