[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第100回】“ハイレゾとは何なのか?”− 楽曲制作プロセスからみるハイレゾ考察
▼ベーシックパターン
録音 | 編集 | マスタリング | ハイレゾリマスタリング→配信 | ||||
G | ハイレゾPCM | → | ハイレゾのままエディットやミックス | → | ハイレゾのままマスタリング | → | この場合この行程は不要で前段のハイレゾのマスターで完成 |
H | → | 下位のハイレゾフォーマットにダウンコンバートしてして完成 |
「パターンG」と「パターンH」はハイレゾ音源制作の王道と言ってよいだろう。
まず「パターンG」は、前述の「録音から配信までが同じハイレゾフォーマットのまま進められている」文句なしのハイレゾ配信音源だ。これは改めての説明は不要だろう。
その下の「パターンH」は制作時のハイレゾフォーマットよりも下位のハイレゾフォーマットにダウンコンバートして配信するパターン。「192kHz/24bitで録音してそのままマスターまで作ってるけど96kHz/24bitで配信」などだ。
これは例えば、
「制作時は可能な限り最高の音質と処理精度を確保しておくために192kHz/24bitにしたけれど、再生音源としては96kHz/24bitで十分だからそこに落とし込んで配信しよう」
「制作時は処理精度を確保するために32bitにしたけれど、32bitは再生環境が普及していないから24bitに落とし込んで配信しよう」
といったような意図でそうなっているものと思われる。
もっと具体的に言えば、「より多くの機器で再生できるスペック」「ダウンロード時間も保存のためのメディア容量も少なくてすむファイル容量」に落とし込むということだ。現実的で合理的な判断と思える。
ちなみにさかのぼれば、当時はまだハイレゾ配信なんてものは想像もされておらず、CDでの発売しか想定されていなかった時代に、しかしハイレゾで録音されていた作品というのもある。それもそういった意図からだったのかもしれない(あるいはただ純粋に「それを流通させる手段はなくても作品を可能な限りの高音質で残しておきたい」という願いからだったのかもしれない)。
さてここで気に留めておいてほしいのは、「制作時は可能な限り最高の音質と処理精度を確保しておくために上位フォーマットを用いる」という手法、そういった考え方の存在だ。より上位の情報量の多いフォーマットで録音、そしてそれ以降の各処理を行うことで、エディットやミックス、マスタリング時の精度の高さを確保できる。このあたりは僕の理解も完全ではないが、例えば誤差の最小化というか割り切れなさの最小化というか、あとは音量調整時の「ビット落ち」という現象の影響の最小化もその狙いかもしれない。
何にせよ、その段階での精度の高さはそれを下位のフォーマットに落とし込んだ際にも生きる…という考え方と手法だ。これは以降に紹介する他のいくつかのパターンでも活用されている。
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