公開日 2016/01/10 09:30
<CES>Sony Electronics 奥田氏が語る、“利益重視”体制で挑む4K・ハイレゾ米国市場戦略
2016年の課題はオーディオ
2016 International CESの開催国である米国は、ソニーにとって薄型テレビ、そしてハイレゾオーディオと現在攻略途上にあるマーケットだ。2014年から米Sony Electronicsに着任し、3回目のCESを迎える奥田利文氏へのグループ取材から、米国市場の現状をお届けする。
まず、冒頭に奥田氏が説明したのは、米国市場におけるソニーの営業体制の立て直しについてだった。ソニーでは、組織が肥大化していた2013年より現場とバックの組織改革に取り組み、取り扱う商品を“プレミアムを持った商品”へ徹底。また、ソニー全体の取り扱い製品は、カメラのレンズ等を個別にカウントしても実に1,800種類あったが、2015年にはこれを400種類まで絞った。さらに、以前は150社ほどあった取引先を15社へ減らし、40近くあった直営店を閉鎖するなどの大幅な絞り込みを実施し、利益重視の体制にシフトしつつ売上2割成長を確保している。2014年はテレビ:4K&サウンドバー、2015年はカメラ、そして2016年はオーディオ:ハイレゾ&マルチルームを課題にかかげ、プレミアムモデル中心、利益重視の体制を作り上げ再建途上にあるというのが現状だ。
以下、グループ取材からオーディオ&ビジュアル関連の話題を抜粋してお届けする。
−− 薄型テレビの市場について、2Kモデル・4Kモデルの割合はどうなっているか。
奥田氏: 米国のテレビ市場全体は昔からずっと変わらず4,000万台。4K比率はそのうち10%〜15%で、来年には3割に到達するだろう。中でもソニーは2014年から2Kより4Kの方に注力しており、販売台数ベースで4Kが7割を占めている。なお、米国市場はウォールマートで売られているような低価格帯テレビのセグメントもあるが、ソニーではほとんど取引をしていない。1,000ドル以上の市場も広がっている。また、米国には映画だけでなく、アメフトなどスポーツを視聴する場合の大画面需要がある。
−− 米国における薄型テレビのシェアについてはどう考えているか。今後シェア拡大を目指すつもりはあるか。
奥田氏: ディスプレイリサーチなどの外部調査の通り、ソニーは1桁台の真ん中より下のシェアしかないが、現在の戦略を変えるつもりはない。ソニーの注力するプレミアム商品で、ハイエンドを中心にまだまだ出来ることがたくさんある。例えば、カスタムインストレーションや75インチ以上の製品に注力する。低価格帯のものをやる気持ちはない。今後3年経って売上は伸びないかもしれないが、利益を確保したい。
−− Android TVをどう見ているか。
奥田氏: テレビを購入しようとする人にとって最重要ではないキーワードかもしれないが、実際にテレビを使い始めてからは意味が出てくる。例えば、ユーザーがブラビアで見たいと思ったコンテンツがNetflixにあったとき、それはAndroid TVを通して視聴することになる。また、ブラビアのプラットフォームがAndroid TVになったことで、米国での協業はしやすくなっている。
−− ハイレゾオーディオをどう北米で売っていくか。
奥田氏: ウォークマンのプレミアムモデルを、ベストバイの中でも高級商品を扱うマグノリアという専門店で、音響に詳しい店頭スタッフを通して展開していきたい。まずは、ソニーの音響製品がどういうものなのかというアイデンティティを示し、3年なのか、5年なのかはわからないが、時間をかけて販売していく。それには“ハイレゾストリーミング”がキーになると思う。
−− 米国におけるソニーの現在のブランドイメージをどう捉えているか。
奥田氏: 昔とあまり変わっていない。ブラウン管のトリニトロンのイメージは残っていて映像機器は強い。iPhoneのイメージセンサーを作っている会社として、カメラの高画質についても認知されている。ソニー全体としてはプレイステーション4やソニー・ピクチャーズ・エンターテイメントもよく知られている。
−− 米国では、ソニー・ミュージックもソニー・ピクチャーズもあるが、何か協業は考えていないのか。
奥田氏: プレスカンファレンスで発表した4K/HDR配信「ultra」はソニー・ピクチャーズが行っている事業なので映像は関わりがある。音楽については、今では音楽と言えばアップルやiTunesが最初に浮かんでくるように、音楽とソニーの距離が広がってしまったことが課題だ。音楽は映画のように受動的に観るだけでなく、演奏するなど能動的に楽しむ文化も米国では強い。大金を払ってヒットしたアーティストを起用するやり方よりも、音楽を作る方での協業ができると面白いと考えている。
(折原 一也)
まず、冒頭に奥田氏が説明したのは、米国市場におけるソニーの営業体制の立て直しについてだった。ソニーでは、組織が肥大化していた2013年より現場とバックの組織改革に取り組み、取り扱う商品を“プレミアムを持った商品”へ徹底。また、ソニー全体の取り扱い製品は、カメラのレンズ等を個別にカウントしても実に1,800種類あったが、2015年にはこれを400種類まで絞った。さらに、以前は150社ほどあった取引先を15社へ減らし、40近くあった直営店を閉鎖するなどの大幅な絞り込みを実施し、利益重視の体制にシフトしつつ売上2割成長を確保している。2014年はテレビ:4K&サウンドバー、2015年はカメラ、そして2016年はオーディオ:ハイレゾ&マルチルームを課題にかかげ、プレミアムモデル中心、利益重視の体制を作り上げ再建途上にあるというのが現状だ。
以下、グループ取材からオーディオ&ビジュアル関連の話題を抜粋してお届けする。
−− 薄型テレビの市場について、2Kモデル・4Kモデルの割合はどうなっているか。
奥田氏: 米国のテレビ市場全体は昔からずっと変わらず4,000万台。4K比率はそのうち10%〜15%で、来年には3割に到達するだろう。中でもソニーは2014年から2Kより4Kの方に注力しており、販売台数ベースで4Kが7割を占めている。なお、米国市場はウォールマートで売られているような低価格帯テレビのセグメントもあるが、ソニーではほとんど取引をしていない。1,000ドル以上の市場も広がっている。また、米国には映画だけでなく、アメフトなどスポーツを視聴する場合の大画面需要がある。
−− 米国における薄型テレビのシェアについてはどう考えているか。今後シェア拡大を目指すつもりはあるか。
奥田氏: ディスプレイリサーチなどの外部調査の通り、ソニーは1桁台の真ん中より下のシェアしかないが、現在の戦略を変えるつもりはない。ソニーの注力するプレミアム商品で、ハイエンドを中心にまだまだ出来ることがたくさんある。例えば、カスタムインストレーションや75インチ以上の製品に注力する。低価格帯のものをやる気持ちはない。今後3年経って売上は伸びないかもしれないが、利益を確保したい。
−− Android TVをどう見ているか。
奥田氏: テレビを購入しようとする人にとって最重要ではないキーワードかもしれないが、実際にテレビを使い始めてからは意味が出てくる。例えば、ユーザーがブラビアで見たいと思ったコンテンツがNetflixにあったとき、それはAndroid TVを通して視聴することになる。また、ブラビアのプラットフォームがAndroid TVになったことで、米国での協業はしやすくなっている。
−− ハイレゾオーディオをどう北米で売っていくか。
奥田氏: ウォークマンのプレミアムモデルを、ベストバイの中でも高級商品を扱うマグノリアという専門店で、音響に詳しい店頭スタッフを通して展開していきたい。まずは、ソニーの音響製品がどういうものなのかというアイデンティティを示し、3年なのか、5年なのかはわからないが、時間をかけて販売していく。それには“ハイレゾストリーミング”がキーになると思う。
−− 米国におけるソニーの現在のブランドイメージをどう捉えているか。
奥田氏: 昔とあまり変わっていない。ブラウン管のトリニトロンのイメージは残っていて映像機器は強い。iPhoneのイメージセンサーを作っている会社として、カメラの高画質についても認知されている。ソニー全体としてはプレイステーション4やソニー・ピクチャーズ・エンターテイメントもよく知られている。
−− 米国では、ソニー・ミュージックもソニー・ピクチャーズもあるが、何か協業は考えていないのか。
奥田氏: プレスカンファレンスで発表した4K/HDR配信「ultra」はソニー・ピクチャーズが行っている事業なので映像は関わりがある。音楽については、今では音楽と言えばアップルやiTunesが最初に浮かんでくるように、音楽とソニーの距離が広がってしまったことが課題だ。音楽は映画のように受動的に観るだけでなく、演奏するなど能動的に楽しむ文化も米国では強い。大金を払ってヒットしたアーティストを起用するやり方よりも、音楽を作る方での協業ができると面白いと考えている。
(折原 一也)
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11/18 10:32 更新