• ブランド
    特設サイト
公開日 2016/06/16 09:35

ラズパイ・オーディオでDSDネイティブ再生、DSD 11.2MHzの世界を目指す

海上忍のラズパイ・オーディオ通信(16)
海上 忍
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
■ラズパイ・オーディオでDSD 11.2MHz(DSD 256)対応が遅れている理由

コンポーネントオーディオで急速に対応が進む「DSD 11.2MHz(DSD 256)」だが、残念ながらラズパイ・オーディオではまだこれから。簡単にいえば、Linuxカーネルとサウンドライブラリ(ALSA)、再生ソフトウェアという三位一体での対応が必要なことが理由だ。

DSDの実データ(16bit)に8bitの識別信号を添えた計24bitの信号をPCMのフレームに格納して伝送する「DoP(DSD over PCM)」は、PCMという"枯れた"インターフェイスが存在するだけに、比較的早い段階からサポートされてきたが、完全なネイティブ再生はそうもいかない。カーネルやライブラリといった基礎レイヤーでの対応が必要になるのだ。

DoPでもDSD再生であることは確かだが、8bitの識別信号はある意味ダミーであり、実データのみ転送すれば用は足りる。Windowsを例にすると、DSDネイティブ(非DoP)再生にはASIOドライバを必要とするDACが存在するが、それはWindows標準のオーディオAPI「WASAPI」にDSD用インターフェイスが定義されていないためだ。Macも同様に、OS Xの標準オーディオAPI「Core Audio」の仕様により、DSD再生はDoPが基本となる。

Linuxを利用するラズパイ・オーディオの事情も、基本的にはWindows/Macと同じと考えていい。しかし、WASAPIやCore Audioに相当する「ALSA」はオープンソース −− ソースコードを公開し誰でも開発に参加できるソフトウェア、基本的に自由な改変と再配布が可能だが、変更内容は公開義務を負うとのライセンス条項を持つものが多い −− であり、ユーザコミュニティによる自助努力で道は開ける。実際、DSDネイティブ再生に対応するためのソースコード差分(パッチ)は、以前から有志開発者により提供されていた。

MPDとtelnetで通信し、再生中の楽曲情報を表示したところ。audio欄には、DSD 11.2MHz(DSD 256)を意味する「1411200」が表示されている

それでもDoPに頼らないDSDネイティブ再生が一般化していない理由は、ディストリビューションとしての準備ができていなかったらだ。Linuxの場合、OSの中核であるカーネルのほかに、各種ライブラリやコマンド、ネットワークサービスなど多数のソフトウェアをまとめて配布物(ディストリビューション)に仕上げる。ソフトウェア間には依存関係があることが多く、そのバージョンによって動作する/しないの問題が生じうるため、ディストリビューション開発は時間と人手を要する大変な作業だ。

LinuxディストリビューションにはDebianやRed Hatなどいくつかの系統があるが、いずれもデスクトップPCが開発の本流であり、その支流に位置付けられるRaspberry Piの場合、PC向けディストリビューションを基礎としてソフトウェアの取捨選択を行うことになる。Volumioなどオーディオ用途のRaspberry Pi用OSは、いわば"支流の支流"に相当するわけで、正式版の配布物としてDSDネイティブ再生をうたうまでには相応の時間を要してしまうのだ(開発者のモチベーションや趣味の部分も大きいが)。

今回DSDネイティブ再生のテストに利用した「iFi Audio micro iDSD」。DSD 11.2MHz(DSD 256)の再生にもバッチリ対応する

次ページ“DSDネイティブ再生”にこだわる理由とは?

1 2 3 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 ソニー、第2世代フラグシップ・ミラーレス一眼「α1 II」。画質、操作性を着実に強化
2 オーディオファイル待望の物量投入型プリメインアンプ!デノン「PMA-3000NE」をクオリティチェック
3 目黒蓮を“もっとそばに”感じられる特別イベント。「レグザミュージアム〜The 6 STORIES〜」11/21から原宿で開催
4 ボーズ、McIntosh Groupを買収。マッキントッシュ、ソナス・ファベールが傘下に
5 ビックカメラ.com、「2025年新春福箱」の抽選申し込み開始。全66種類、iPadやPS5も登場
6 覚えておくと絶対便利!iPhoneの「計測」アプリでできる、あんなことこんなこと
7 ビクター「HA-A6T」レビュー!5000円切り完全ワイヤレスイヤホンは「価格を上回るクオリティ」
8 高音質と機能性を両立する新たなスタンダード機!AVIOTのANC完全ワイヤレス「TE-V1R」レビュー
9 Meze Audioが打ち出す待望の入門モデル。開放型ヘッドホン「105 AER」&イヤホン「ALBA」の音質に迫る
10 新開発ユニットを巧みに操る懐深いサウンド。ELAC「Debut 3.0」フロア型/ブックシェルフ型を聴く
11/21 10:37 更新
MAGAZINE
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー193号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.194
オーディオアクセサリー大全2025~2026
別冊・ケーブル大全
別冊・オーディオアクセサリー大全
最新号
2025~2026
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.22 2024冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.22
プレミアムヘッドホンガイド Vol.32 2024 AUTUMN
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.32(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2024年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2024年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2024年冬版(電子版)
音元出版の雑誌 電子版 読み放題サービス
「マガジンプレミアム」お試し無料!

雑誌販売に関するお問合せ

WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX