公開日 2017/02/23 10:23

マランツ「PM-10」を聴く。800 D3も鳴らし切る、一体型の枠を超えた新旗艦アンプ

高性能スイッチングアンプ採用で実現したセパレートアンプの一体化
ついに明日24日から出荷が開始される、マランツの新たな旗艦プリメインアンプ「PM-10」。セパレートアンプの優位性を1筐体のプリメインで実現するべく、スイッチングアンプ採用など新しい取り組みに挑んだ本機の実力を、角田郁雄氏が検証していく。

Marantz「PM-10」

プリ+モノラル・パワー×2の内容を、インテグレーテッドアンプで実現

マランツのフラグシップSACDプレーヤー「SA-10」を、私は高く評価している。CDを再生してもアナログライクで柔らかな倍音を再現し、ボトムエンドを打つような低音もドラマティックと言いたくなるほどリアルに描写する。マランツ伝統の空間再現性も見事なものだ。

コアとなる技術は、世界でも稀有なディスクリート構成ΔΣ 1bitDACだ。その音質もさることながら、精密感に溢れた内部技術と構成は理にかなったもので、そこにはある種の美しささえ感じさせられる。このSA-10に触れた時、純正組み合わせのインテグレーテッドアンプとして予告されていた「PM-10」にも、期待せずにはいられなかった。

Marantzの旗艦SACDプレーヤー「SA-10」

SA-10から遅れること約5ヶ月、PM-10はマランツらしく仕上がりのよい、柔らかさを感じさせる洗練されたアルミ製フロントデザインをまとって登場した。これを見たら、SA-10と並べたくなる。私が自宅試聴室で愛用しているB&W「802 D3」ともデザインがマッチしている。その音を聴く前から、組み合わせてドライブしてみたいという気持ちに駆られる。そう、PM-10に込められた意図は、インテグレーテッドアンプで「800 D3」や「802 D3」のような大型スピーカースピーカーを鳴らしきることなのだ。

マランツがPM-10において構想したこと、それはマランツがリファレンスとして長年開発に用いてきたプリアンプ「SC-7S2」とモノラル・パワーアンプ「MA-9S2」によって鳴らされる音を、1筐体のインテグレーテッドアンプで実現することであった。

目指したのは、「大出力/駆動力」「フルバランス回路」「セパレート電源」の3要素

開発にあたって具体的にキーワードとして定められたのは、「大出力/駆動力」「フルバランス回路」「セパレート電源」の3要素だ。そして、PM-10における同社の新しい取り組みとして注目すべきは、「大出力/駆動力」を実現するため、パワーブロックにスイッチングアンプを採用したことだ。

詳しくは後述するが、私はスイッチングアンプを高く評価する。小型化ができ、電力損失が極小で高効率であり、大出力が得られるからだ。私はPM-10と対面して早々に、その内部を観察した。

PM-10の筐体内部

まず感心したことは、SA-10と同様に内部コンストラクションが理にかなっていて、見た目にも美しく仕上げられていることだ。私はオーディオ機器に対して、音もさることながら、デザインと、さらには内部構成の美しさを求めてしまう。そして、こうした感覚こそが現代ユーザーが求めるハイエンドオーディオなのではないかと常々考えている。さて、いつものようにトップカバーを外して、内部回路を説明していこう。

フロントパネルを手前にして観察すると、向かって右側にアナログ・プリアンプが配置されている。中央のリアパネル付近には、ヒートシンクが一体化したL/R完全独立のスイッチングアンプによるパワーブロックを配置。その手前のシールドされたトロイダルトランスはプリアンプ用だ。向かって左側には徹底したノイズコントロールを行ったスイッチングアンプ用のスイッチング電源が、L/R分離して配置されている。伝送距離を考慮した見事なレイアウトである。

次ページ「SC-7S2」を進化させた、フルバランス/フルディスクリートのプリアンプ部

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