• ブランド
    特設サイト
公開日 2014/12/26 10:30

パイオニア「SC-LX88/78」レビュー − 想像以上の進化を遂げた革新的AVアンプ

【特別企画】画質・音質を徹底検証
山之内 正
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
2014年はサラウンドの最新技術「ドルビーアトモス」が発進したことで、AVアンプの新たな進化に注目が集まった。演算能力の向上、多様なスピーカー配置への対応など、Atmosに関連した課題をクリアすることがまずは重要だが、もちろん進化はそこにとどまらない。音源の情報量が拡大してチャンネル数が増えればそれだけアンプへの要求は高まり、基本性能のさらなる向上が不可欠となる。今回もまた新フォーマットの登場がAVアンプの本質的な進化を促すのだ。

SC-LX88(右)、SC-LX78(左)

パイオニアは2014年秋にSCシリーズの陣容を更新し、SC-LX58、SC-LX78、SC-LX88の3機種を投入した。このレビューではその上位2機種に焦点を合わせ、進化の中身をじっくり検証する。

SC-LX88

SC-LX78

高い基礎体力を持つ最高峰AVアンプ

SC-LX78とSC-LX88はデジタル回路、アンプなどの基幹部分が共通で、9ch構成のダイレクトエナジーHDアンプを積むことも変わらない。機能・性能面での大きな違いはSC-LX88のみUSB-DACを搭載していることと、出力の数値が若干異なる(LX88は810W/9ch、LX78は770W/9ch)ぐらいで、ホームシアター用アンプとしての基本構成と基礎体力はほぼ同格とみなしていいだろう。どちらもアップデートによるドルビーアトモス対応を実現しているので、多次元サラウンド再生に本格的に取り組みたい人には2機種とも有力な候補になり得る。

2機種に共通する重要な開発テーマの一つが、低音の質感を向上させて一段階上のサウンド・クオリティを実現することだ。PWM変換を受け持つオペアンプ部とゲート駆動ICを独立させた構成を受け継ぐなど、ダイレクトエナジーHDアンプの熟成を進めるとともに、オペアンプやコンデンサーなど部品レベルの吟味も怠らず、音の追い込みは細部に及んでいる。

独自パワー素子「Direct Power FET」を使った「ダイレクトエナジー HDアンプ」を搭載

ルビコン社と共同開発の「PML MUコンデンサー」を随所に投入し、音質に磨きをかけた

そして、オーディオ回路のかなめであるDACにはESS社のES9016Sを2基搭載し、全チャンネルごとの動作環境の違いを解消したことが大きい。DACのポテンシャルを完全に引き出すことを念頭に置いて音を追い込んでいるため、アンプの総体で音の方向がしっかり定まっている印象を受ける。ドルビーアトモスに新しく採用されたオブジェクトベースの手法を駆使し、リアルな多次元音響を実現するためには、音色やエネルギーバランスなど全チャンネルの基本性能を高い次元で揃えることが不可欠で、アンプ全体としての統一を図ることが深い意味を持つのだ。

ESS製DACは専用基板に搭載。配線距離を最短にしたほか、専用電源供給も行っている。

低音再生能力を機能面で強化するため、自動音場補正機能MCACCにもリファインが行われ、MCACC Proに進化した。サブウーファーの出力を2系統用意したうえで自動または手動によるデュアルサブウーファーEQ調整を追加し、超低音の質感向上を狙っているのだ。サブウーファー帯域の遅延を解消し、本来の音色を取り戻すことはすべての音域に効果が及ぶため、確実な音質改善につながる。AVアンプの低音再生能力向上をパイオニアが牽引してきたことに異論の余地はないが、MCACC Proはそのリードをさらに広げる役割を担う。なお、SC-LX88にはミリ単位の精度でスピーカーの位置調整ができる「プレシジョンディスタンス」機能を導入しており、時間軸精度の改善に効果を発揮する。これらの改善がドルビーアトモスの表現力向上に果たす役割も、もちろん無視することはできない。

音質改善技術のなかには、プレシジョンディスタンス以外にもSC-LX88だけに採用されたノウハウがある。たとえば電源トランスから発生する漏洩磁束を厳密にコントロールし、オーディオ回路への影響を最小に抑え込むチューニング手法もその一つだ。昨年の最上位モデルSC-LX87にも採用されていたこの技術は、特定の方向への磁束漏れを抑えることで基板付近での磁束ノイズ分布を低減させ、再生音の純度を高める効果が期待できる。それによって普通に聴き取れるレベルの差が出るのか、それとも限られた次元での微妙な差なのか、気になるところだが、それは実際の試聴のなかで探っていきたい。

入力端子にも装備の違いがある。デジタル入力については両機種の差はほぼないのだが、アナログのマルチチャンネル入力はSC-LX88にしか付いていないのだ。BDP-LX91など、マルチチャンネルのアナログ出力を利用している場合は注意しよう。

SC-LX88の背面部

SC-LX78の背面部

ドルビーアトモスのスピーカー配置はLX88、LX78いずれも3つのパターンを用意している。聴き手の位置の真上やや前方に2本のトップミドルスピーカーを追加し、フロントワイドとの自動切替に対応する7.2.2ch-TMd/Fw配置、同じく2本のトップミドルとフロントハイトの自動切替に対応する7.2.2ch-TMd/FH配置、4本のトップスピーカー(トップフォワード/トップバックワード)を追加する5.2.4ch-TFw/TBw配置の3パターンだ。

次ページアンプとしての基本性能をチェック

1 2 3 4 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック

クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 「オーディオのオンキヨー」復活へ。新スピーカーとセパレートシステムを年明けのCESで発表
2 【完全ワイヤレスイヤホン特集 PART.10】音のプロが選ぶベストバイは?
3 CD再生とファイル再生の架け橋に!Shanlingからリッピング機能付きトランスポート「CR60」が登場
4 今こそ「ミニコンポ」が面白い! デノン/マランツ/B&Wの令和ライフにマッチする厳選5モデルレビュー
5 水月雨、『崩壊:スターレイル』とのコラボ完全ワイヤレス。ダイナミック+環状平面駆動の同軸ドライバー搭載
6 【ミニレビュー】空き電源コンセントに挿入するだけ。オーディオみじんこ「SILVER HARMONIZER AC-ADVANCE」
7 モニターオーディオ「GOLDシリーズ」レビュー。ユニット大幅刷新の第6世代機は「ハイスピードで焦点の明確な音調」
8 AVIOT、『らんま1/2』コラボ完全ワイヤレスイヤホン。完全新録ボイス240種類以上搭載
9 Nothing、スマホ/イヤホンが最大30%オフ価格になるウィンターキャンペーン。先着順で靴下もらえる
10 要注目の新興ブランド、ラトビア「アレタイ」スピーカー試聴レビュー!広大な空間描写力が魅力
12/20 10:05 更新
MAGAZINE
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー193号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.195
オーディオアクセサリー大全2025~2026
別冊・ケーブル大全
別冊・オーディオアクセサリー大全
最新号
2025~2026
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.22 2024冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.22
プレミアムヘッドホンガイド Vol.32 2024 AUTUMN
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.32(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2024年冬版(電子版)
音元出版の雑誌 電子版 読み放題サービス
「マガジンプレミアム」お試し無料!

雑誌販売に関するお問合せ

WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX