【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
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毎月連載のPhile-web特別企画「Sound Adventure(サウンド・アドベンチャー)」では、オーディオ・ビジュアルエンターテインメントの最前線で活躍される評論家の方々を「ナビゲーター」に迎え、いま最も注目を浴びるデジタルエンターテインメントのスタイルを徹底探求します。最新オーディオ・ビジュアル製品のレビューやハンドリングレポートも毎回紹介して行きます。
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム

店舗の音響設計がインターネットで体験できる

広い分野に渡って良質のサウンドシステムを提案するブランドであるボーズが、このほど「BOSE System Design Guide」というサイトを立ち上げる。一般店舗や飲食店といった小規模店舗のスピーカーシステムの構築に必要なノウハウをエンドユーザー、つまり実際に店を持つ「あなた」に提供することを目的とした情報サイトだ。

店舗の音響設計は設計会社や施工担当業者に完全に任せる、あるいは希望を伝えはするものの実際の設計は任せるといった形が一般的である。「音響設計」などと仰々しく言えば、専門的な知識と経験を持ったプロに任せるしかないと考えるのも当然だろう。

しかし今回ボーズの提案するBOSE System Design Guideに触れてみると、一般店舗程度の規模で用途が店内BGMなどに限られている場合、そこにフィットするスピーカー及びアンプの選択と配置は、我々が思っているほどに実際は難しくないようだ。ならば、せっかくの自分の店なのだから音響も自分でセレクトしてみたい。そんな気もしてくるのではないだろうか。


業務用スピーカーシステムにも豊富な実績を持つボーズによるガイド

商業空間にスピーカーシステムを設置するための教科書サイト「BOSE System
Design Guide」のサービスはhttp://www.bose.co.jp/pro/design_guide/から体験できる

とは言え、やはりある程度の知識は必要だ。例えば「店舗向けではモノラルシステムが標準的」ということを知らずにステレオシステムを組んでしまえば、店舗内のあちらの席では右チャンネルばかりが聴こえ、こちらの席では左チャンネルばかりが…、といった有様を作り上げてしまうかもしれない。それではリスナー、つまりお客様に良い気分で店を利用してもらうことができない。オーディオにこだわりを持っている方々であれば、これから持とうとする店舗に満足の行かない音響空間を構築してしまうことは我慢がならないのではないだろうか。そうならないためにも、通常のホームオーディオとは異なる店舗向けのノウハウは、ある程度自身で身につけておきたい。

ボーズと言えば業務用音響設備の分野でも一流のブランドだ。国立近代美術館講堂をはじめとする大規模施設から、身近なところではスターバックスやHMVまで、「BOSE」のロゴが入ったスピーカーを見かける機会は多い。同社が小規模店舗向けスピーカーシステム設計に必要なノウハウや設計シミュレーションを、Webサイトから提供してくれる新しいサービスが、BOSE System Design Guideなのである。


はじめに業務用スピーカーシステムの基礎知識を学んでおこう

BOSE System Design Guideにアクセスしたら、まずは「BGM基礎知識」コーナーを読んでおこう。業務用スピーカーシステムを導入するに当たって、最低限確認しておきたい基礎的な知識がわかりやすくまとめられている。内容は「ステレオ/モノラル」「ハイ/ローインピーダンス」「スピーカーの埋め込みと露出」など全5項目だ。

項目名だけ見ると「それは既に理解している」というものもあるだろうが、用語は同じでも、ホームオーディオと店舗システムでは意味合いや実際の応用が異なる場合も多い。前述のステレオ/モノラルの件もそうだが、例えばインピーダンスは、ローインピーダンスにほぼ統一されているホームオーディオと、ハイとローそれぞれの特性を把握して機器を選ぶ必要のある店舗システムでは重要性が大きく異なる。そのギャップを埋めるために、ここでしっかりと基礎知識を身につけておきたい。

「BGM基礎知識」のメニューから「ステレオ/モノラル」のシステム構築に関するガイド。家庭用のスピーカーでは標準とされているステレオ配置(イメージ左)では、リスナーが不特定な位置で音を聴くことが前提となる店舗や公共空間において最適な再生環境が構築できず、むしろモノラルのシステム構築が一般的に有利となる。その他にも、家庭用スピーカー選択時にも役に立つような情報が、基礎知識の中で紹介されているのでぜひ参照したい


実践的なノウハウが得られるアプリケーションを使ってみよう

次にBOSE System Design Guideのアプリケーションを利用してみよう。トップ画面で「操作画面へ」をクリック。画面の指示に従って項目を選択・入力していくウィザード形式でシステム設計を進めていく。最初に「カフェ」「ブティック」など7例から「施設の選択」を行い、以降「スピーカータイプの選択」「インピーダンスの選択」「スピーカー機種の選定」「アンプの選択」などを行っていく流れだ。

BOSE System Design Guideの豊富なアプリケーションから一部を紹介しよう。はじめに「カフェ」「ブティック」など7例から施設を選択する
「空間情報の入力」メニューとして、想定する店舗のスペースサイズを選択してスピーカー配置の準備を行う
「スピーカー配置」のメニューでは、先に入力された空間情報から、アプリケーションが自動的に最適なスピーカーのセットアップを行ってくれる。ユーザーは個別の環境に合わせて、配置されたスピーカーの移動・追加・削除・回転をドラッグ&ドロップで行い、詳細なシステム構築ができる
入力された設置環境情報を元に、アプリケーションが最適なスピーカーをいくつかピックアップしてくれる。ユーザーはモデルリストの中から、スピーカーの特長や価格情報を参照しながら好みの製品を選択できる

ポイントは各項目で選択肢を選ばせるだけではなく、各選択肢にどのような利点/弱点があるのか、どのように設定すれば適正な効果を得られるのかといったヘルプ情報も表示されるということ。スピーカーであれば、「露出型はインテリア要素が高いが、広い空間では音量にムラが出やすい」「埋め込み型は存在が目立たず、数を用意して音ムラのない空間を作れる」といった具合だ。それらを確認しながら選択を行っていくことで、シミュレーションと同時に実践的なノウハウも得られるのである。

全項目の選択を終えると、系統概念図(接続図解)と機器リスト(簡易見積)が作成される。実際のシステム構築時には個別の環境ごとに細かな課題も生まれてくるだろうが、事前の目安として充分に活用できる。最終的にはボーズに直接問い合わせ、シミュレーション結果を元にプロの意見を取り入れて設計を固めればよい。


まずはその楽しさと実用性を体験して欲しい

今回の試用で印象的だったのは、その予想外の「楽しさ」だ。音に興味のある人間ならば、そこが自室であれ店舗であれ、自らの手でシステムを設計する喜びは共通なのだろう。実際には趣味的な喜びより現実的メリットを求められる分野ではあるが、Webサービスという形式の敷居の低さも含めて、気軽に楽しみながら実用知識やシステム例を得られるのは大きなメリットだ。とにかくまずは、その楽しさと実用性をご自身で試してみてほしい。


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高橋敦(Atsushi Takahashi)

埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。


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