■アナログレコードのどんなところに魅力を感じますか?
炭山先生(以下:炭山):本日は武藤さんに、アナログレコードの魅力と具体的な楽しみ方についてご紹介したいと考えています。
武藤さん(以下:武藤):アナログレコードには前からとても興味がありました。今日は色々と教えていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。
炭山:武藤さんは今、どんな環境で主に音楽を聴いていますか。
武藤:家ではPCに2.1ch構成のマルチメディアスピーカーをつないで聴いています。ソフトのメディアはCDが多いですが、大抵はPCのハードディスクにMP3形式で大量に保存しています。もちろんポータブルプレーヤーに保存して、外出先でも楽しんでいます。
炭山:インターネットの楽曲配信サービスはよく使っていますか。
武藤:よく使いますね。レンタルショップなどもよく利用します。買ったCDもすぐにPCに取り込んでしまうので、最近はCDの盤を見ることも少なくなったように思います。
炭山:楽曲データだけが手元にあるのと、「モノ」としてCDやレコードが手元にあることの、存在感の違いみたいなものはあまり気になりませんか。
武藤:元来あまり執着がない方なんです。本などもよく図書館で借りて読みます。ただ、最近レコードに興味が出てきた理由は、やはりジャケットが格好良いと感じる点が一番大きいです。将来コレクションするならば、やっぱりCDよりもアナログレコードの方が、1ヶ月に1枚ずつ買ったり、趣味として贅沢な雰囲気も楽しめると思います。
炭山:それでは武藤さんは今までほとんどレコードは聴いたことはなかったんですか。
武藤:音楽を聴き始めたのはレコードとテープです。父がアナログプレーヤーを持っていましたので。子供の頃は両親に買ってもらった自分のレコードも持っていました。その後、ちょうど小学校に入学した頃にCDが世の中に出てきて、自分のお金で買うようになったのはCDからでしょう。
炭山:アナログプレーヤーはお父さんの持ち物ということですが、当時はなかなか簡単に触らせてもらえなかったのではないでしょうか。
武藤:そうでしたね。レコード針なんかは厳重に監視をされていまして。子供なので、注意しておかないとガリガリいじって壊してしまいますので。
炭山:私も、今でも色々な方々に上手な針の掃除の方法を訊ねられます。この先端を掃除する時に、毛糸のセーターなどを着ていると、その毛先で針をひっかけて折ってしまう人がいるんです。実は私自身も今まで数々の針先を失ってきました。武藤さんのお父さんが気を付けろと、口をすっぱくして注意されていたのはよくわかりますね。
武藤:針先だけを交換できるんですか。
炭山:できますよ。カートリッジとは別に、針先だけが商品として売られています。交換用の針の値段も安いものから高価なものまで様々です。
炭山:武藤さんは普段、どんなジャンルの音楽をよく聴かれますか。
武藤:UKのロックが大好きで、いつもワクワクしながら聴いています。あとは食事中などにジャズを聴くことが多くなりました。
炭山:武藤さんがお好きな作品も、最近はアナログレコードでもよく手に入るのでしょうね。
武藤:そう思います。最近はロック系のクラブなどに行くと、よくかかっているのを耳にしますので。本国UKでも、この頃はテクノ系よりもインディーズのロック系の作品をDJが回すのが流行っているようです。
炭山:日本国内でもアナログレコードが全般的に復調傾向と聞きます。バラエティ豊かな作品がアナログ化されているようです。様々な雑誌や新聞でアナログブームを取り扱ったページを目にする機会があります。武藤さんも最近は、ご自分の好きなタイトルをアナログでも手に入れたいと考えるようになって来たのではないですか。
武藤:欲しいですね。雑誌などでも最近よく取り上げられていますが、ロックやジャズのレコードは「ジャケット」がとにかく格好良いですからね。
■アナログレコードを聴くために必要な再生システムとは
炭山:では、アナログレコードを楽しむための機器としては、どのようなものを揃えればよいのかはご存じでしょうか。
武藤:むかし家にアナログプレーヤーはありましたので何となくはわかりますが、自分はCD付きのミニコンポで音楽を聴いて、テープにダビングして持ち歩くというスタイルが学生の頃から定着していましたので、まあ、単品でアンプやプレーヤーなど、機器を全部揃えるという発想はなかったですね。入門者としてはどんなところから始めれば良いのでしょうか。
炭山:セットタイプのオーディオシステムにアナログプレーヤーを買い足して、まずはアナログレコードを気軽に楽しんでみることをお勧めします。その際には、オーディオシステムの中に「フォノイコライザー」というものが入っているかを確認して欲しいと思います。入門向けの比較的安価なアナログプレーヤーならばフォノイコライザーを内蔵している場合もありますし、少しグレードの高いプレーヤーを用意して、フォノイコライザーを単体で買いそろえることもできます。
武藤:「フォノイコライザー」が何かを詳しく教えて欲しいのですが。
炭山:CDプレーヤーやiPodは大体200mVから250mVの電圧で駆動しています。ところが、アナログプレーヤーのカートリッジは2mVから5mVほどの低電圧で動いていますので、これをフォノイコライザーでおよそ100倍に持ち上げてあげないと、アンプにつないで再生した時に音が小さ過ぎるんです。それから、アナログレコードには「音」が横向きの振幅に刻まれていて、低音は振幅が大きく、高音は振幅が小さくなっています。低音はあまり入れすぎてしまうと隣の音溝にひっかかってしまうので、低音を小さく、高音を大きく刻んであるんです。これを元の再生レベルに戻して、均等にするのがフォノイコライザーのもう一つの役割です。今回は、デノンのミドルクラスのアナログプレーヤー「DP-500M」に、ボーズのオーディオシステム「AMS-1
IV」を組み合わせてアナログ再生を楽しんでみようと思います。「AMS-1 IV」ではMM型のフォノ入力を備えていて、単体のフォノイコライザーを仲介させずにアナログプレーヤーを接続することができるのも大きな特長の一つです。
武藤:では、その他にオーディオシステムとアナログプレーヤーをつなぐ際に注意すべき点を教えて下さい。
炭山:レコード盤に刻まれた音は、レコード針とカートリッジでピックアップされ、アームの中に通っている線を伝ってきます。その線の中に余分な空中からの電波などノイズが飛んでこないように、アースが設けられています。プレーヤー側とオーディオシステム側のアースをつないでやると、信号の中に余分なノイズが入らなくなります。後はプレーヤーからのオーディオケーブルをオーディオシステム側のフォノ端子につなげばOKです。
武藤:アナログプレーヤーと組み合わせるのに最適なオーディオシステムの条件はあるんでしょうか。
炭山:アナログレコードの美味しいところが味わえるようこだわりたいというのであれば、オーディオシステムの最低条件としてはアンプとプレーヤーが別筐体になっていて欲しいですね。デジタルの信号を別筐体で受けることによって、アナログの音は概して奥行きのある滑らかな音になります。
武藤:価格的なバランスについては気にするべきでしょうか。
炭山:アナログプレーヤー、オーディオシステムの双方に色々なランクがあります。アナログプレーヤーについては、今回試聴に使うデノンの「DP-500M」をはじめ、コストパフォーマンスの高いモデルもたくさんあります。その他、ターンテーブルにレコード盤を置いてから、ボタン一つでアームが動いて、針を落としてくれるフルオートのプレーヤーもあります。
武藤:それはちょっとつまらないですね。フルオートだとレコードの味わいが楽しめませんね。
炭山:CDが生まれる前は入門者向けのプレーヤーに多かったんです。今40代以上の方にはフルオートを好む方も多いのではないでしょうか。でも、私も武藤さんと一緒で、レコードといえば自分で針を持っていくというイメージがあるので、フルオートだと何だか味気なく感じてしまう方です。
■良い音を楽しむための最適なシステムのセッティング
武藤:アナログプレーヤーを買ってきた後の、設置のコツはいかがでしょうか。
炭山:まずは置き台が頑丈でないと音は必ず悪くなります。できるだけ丈夫な台に置いてやることが大事です。例えばカラーボックスを横倒しにしたようなものの上に置いてしまうと、床の振動がプレーヤー本体へ、そして針先へと伝わって、ノイズを含む信号がアンプにまわってスピーカーから出力されてしまいます。
あとはプレーヤーのフタであるダストカバーについては、着けない方が音は絶対に良いんですが、着けていないとホコリが積もって掃除が大変になります。なので、ダストカバーをかけたままでプレーヤーを使う場合もあって然るべきと私は思います。ただし、ダストカバーを中途半端に開いて斜めにしたままでの再生は絶対に禁物です。ダストカバーとの間にできる空間が集音マイクになってしまい、ものすごい共振が発生してノイズとなってしまうからです。
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