【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
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毎月連載のPhile-web特別企画「Sound Adventure(サウンド・アドベンチャー)」では、オーディオ・ビジュアルエンターテインメントの最前線で活躍される評論家の方々を「ナビゲーター」に迎え、いま最も注目を浴びるデジタルエンターテインメントのスタイルを徹底探求します。最新オーディオ・ビジュアル製品のレビューやハンドリングレポートも毎回紹介して行きます。
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム

Chika(鈴木智佳子)さんとKohei(酒井康平)さんによるアコースティックギターとボーカルのデュオ「NUDE VOICE」。2000年の結成以来、神奈川県を拠点にライブを行い、昨今は全国へと活動の場を広げていっている、注目の二人組だ。NUDE VOICEという名前のとおり、さりげなく飾らないその歌声は、ストレートに心に響いてくる力を持っている。「音」に対するこだわりも強く持っているおふたり。今回は都内にて行われたライブを取材し、インタビューを敢行。その音楽の魅力の源に迫った。
(取材・インタビュー:Phile-web編集部/写真撮影:川村容一)




Phile-web編集部(以下、PW):4月7日から全国を回ってツアーをされていたんですよね。


Koheiさん(以下敬称略):はい。福岡から始まって大阪、名古屋、仙台など全国7カ所で行いました。今日(4月18日)が最後の公演になります。

Chikaさん(以下敬称略):いつも、聴いてくださった方の心に何か残せるような、でも伝えたいことを押しつけるのではなくて、フッと自然にそれを感じてもらえる…そんな音楽を聴いてもらいたいなと思って活動しています。おかげさまで今回のツアーでも、お客さんから「良かったよ」と直接声をかけていただけることもありました。とても嬉しかったです。

NUDE VOICE(ヌードボイス
▲(左)Chika(右)Kohei
(写真はクリックで拡大)

2000年、Chika(鈴木智佳子)さんとKohei(酒井康平)さんにより結成。茅ヶ崎など神奈川県を拠点にライブ活動を行う。南佳孝氏など著名アーティストのアルバムにゲストボーカルとして参加。2005年にはファーストアルバム「slow wave」、2007年にはセカンドアルバム「WINDING PATH」をリリースした。男女ツインボーカル、ツインギターというスタイルをとり、シンプルなメロディと、グループ名のとおり飾りのない柔らかなハーモニーが魅力だ。
公式サイト(音源の試聴も可能)
http://www.sunandfish.net/nudevoice/
所属事務所「ライトハウスプロモーション」の紹介ページ
http://www.lighthouse-music.com/artists.html

PW:2000年の結成以来、ライブを中心に精力的に活動を行っているそうですが、ライブを行うときにお二人が理想としている音というのはどんなものなのでしょうか?

▲Koheiさん

Kohei:ずばり「生音と同じ音」ですね。もともと音にはこだわりがあり、小さい会場でもPAさんにお願いして、常に自分たちがベストだと思える音をお客さんに伝えられるように試行錯誤してきました。

Chika:聴いていて一番気持ちがいいのは、やっぱり生の楽器の音や生の声だと思うんですよね。でも会場が広くなれば、PAを使わずにライブをすることは不可能です。ですからPAを通して、アコースティックな音とほぼ同じものをお客さんにも提供したい、と常に考えています。

Kohei:ですから、自分たちの歌や楽器の演奏のクオリティはもちろんのこと、PAを使用して得られる「音」も良くなければならないと思っています。ライブって総合アートだと思うのですが、演奏・技術・機材どれかひとつが欠けてもいいものにならない、というのが僕たちの考えです。

Chika:ギターも声も、タッチやニュアンスひとつで全然違うものになってしまう。演奏や曲の気持ちよさはもちろんのこと、PAを通じて届ける「音」がよければ、自分たちのメッセージをより明確にお客さんに伝えられるのでは、と思うんです。


PW:さて、お二人は最近ライブをする際に、BOSEのミュージシャン向け楽器用サウンドシステム「L1 model I system」を使用なさっているそうですね。


(写真はシングルベースパッケージ・¥248,850(税込))
BOSE
ミュージシャン向けサウンドシステム
L1 model I system (取扱店限定モデル)
¥210,000(税込)〜
>>ボーズの製品紹介ページ
>>製品データベースで調べる

ラインアレイスピーカー「L1」とパワースタンド「PS1」から構成されるミュージシャン向け楽器用サウンドシステム。1セットでメインスピーカー/モニタースピーカー/楽器用アンプとして機能する。ミュージシャンの後方に設置することで、観客とミュージシャンが聴く音の不一致や、ボーカルや楽器の聞き取りづらさなどを解決することが可能だ。

Chika:ええ。“L1”に初めて触ったのは今年の1月末です。使ってみた第一印象は「すごいものができたな!」。二人で練習しているときに聴いている音とほぼ同じ「生音」を再生してくれることに驚いて、これなら私たちが目指している音を実現してくれると思いました。

Kohei:一般的な、前方にモニタースピーカーを置くスタイルとは音の聞こえてくる場所が違うので、最初は戸惑いましたが、すぐ慣れました。自分の後ろにスピーカーを置くことで、自分の立ち位置からお客さんに向けて音が出ていることがよく分かるんです。自分の出している音が、舞台の上から会場中を包み込んでいく感じを、演奏しながら感じられる。

▲Chikaさん

Chika:それに、これまでは広い会場であるほど自分たちの音と遠くのお客さんの聴いている音が違ってしまうことに悩んでいましたが、“L1”を使うと、遠くの席のお客さんにも細かい音の粒を伝えることができるんです。席の場所によって音の聞こえ方があまりにも違ってしまうと、同じ値段を払って来てくれた方たちに申し訳ないなという思いがありましたが、“L1”はこれをクリアしてくれました。ステージ近くでも会場の後ろ側でも、音の聞こえ方をほぼ一緒にすることができることはとても嬉しいことです。

PW:今回のツアーのPAにも“L1”を使用されたとか。全国を回って、大きさや環境がさまざまな会場があったと思いますが、それに対して“L1”はどういう働きをしてくれましたか?

Kohei:今までは会場によってモニタースピーカーなどの機材が違うし、PAさんの感覚も毎回毎回細かく違ってくる。だからその会場ごとに、ぴったりの音になるように時間かけて機材を調整しないといけなかったんです。それはとても大変な作業でした。

▲パワーアンプを内蔵したスピーカースタンド「PS1」(左)とオプション品となるB1ベースモジュール(写真はクリックで拡大)
▲オプションの「T1 ToneMatch audio engine」。入力系統の拡張、空間系エフェクトなどの機能を搭載する(写真はクリックで拡大)

Chika:今回のツアーではそういった点の苦労がなかったのも良かったですね。“L1”が1セットずつあればPAはもう全て大丈夫なので。会場の広さや響きの具合に応じて自分たちで音を調整することも、オプションのプロセッシングユニット(T1 ToneMatch audio engine)のつまみを操作するだけで簡単に行えるので、いろいろな環境の会場でも、私たちの考える「いい音」を届けることができたと思います。

Kohei:しかも、今までより会場との一体感がはっきり感じられたんです。演奏している僕たちの後ろから出る音が会場全体が包み込んで、一つになる感じがより強く実感できました。

Chika:それに、今までは自分たちの前にあるモニタースピーカーに対して歌っているような感じになっていたことに気づきましたね。モニタースピーカーからいい音が出るために歌っていたなあ、と。舞台の上だけじゃなくて、会場全体に音を行き渡らせるぞ、というのが、演奏しながら感じられました。

インタビューはとても和やかなムードで行われた。おふたりは笑顔を絶やさない柔らかな雰囲気ながらも、音に対してはハッキリと自分たちの言葉で自分たちの目指すものを語ってくれ、聴き手に「いい音」を提供することに対する確固たるこだわりがあることが伝わってきた。

▲(写真はクリックで拡大)

ライブの始めの一曲は、サイモン&ガーファンクルのデビューアルバムの中から「Wednesday morning,3 A.M.」。曲が始まった瞬間、シンプルな2本のギターの旋律とふたつのハーモニーがふわりと会場中に広がる。“L1”の、縦に配置された24個のスピーカーユニットから発せられるその音はことさらに拡張された感じがなくて、ふたりの柔らかい声がそのまま大きくなったようなイメージだ。耳にキンとくる大音量ではなく、本当に生音に近い、クリアで自然な音に感嘆を覚えた。

オリジナル曲「ジオラマ」(2ndアルバム「WINDING PATH 」に収録)ではギターのアルペジオが流れるようになめらかに会場中に広がっていく。その音の波は背後に配置されたスピーカーからまるで「音のオーラ」のように拡散され、温かく優しく包み込まれているような心地よさを覚えた。「生きること」にまつわる寂しさや人のぬくもりについて歌う歌詞の内容がストレートに心に響いてくる印象だ。


▲(写真はクリックで拡大)

「青い鳥の島」(1stアルバム「slow wave」に収録)は、ゆったりと凪ぐ夕暮れの海の風景が浮かぶようなドリーミーな曲調。重なり合うふたりの声はばらつきやズレがなく、絶妙なバランスだ。ギターの弦の音の粒もつぶれずにきれいに聴き取れる。

ライブ中、会場のステージに近い位置からステージから離れた後方へと移動してみたが、ボリュームや音のバランスなど、聞こえてくる音はほとんど変わらない。それに、ささやくように歌う声の、息づかいまでもを自然に聞き取ることができるのでとても気持ちいい。

ライブならではの音の迫力と、目の前でお二人が歌ってくれているような近さや生々しさ両方を味わうことができた。NUDE VOICEが理想としている「生の音」、そして会場のどこにいるお客さんにも同じいい音を届けたい、という思いがかたちになっていると感じられるひとときだった。


次回はNUDE VOICEのお二人に、おふたりにとっての「音楽」そして「音」に対する哲学について、詳しくインタビューする。

NUDE VOICE 2ndアルバム
WINDING PATH
SFRD-0005 ¥2,500(税込)
レーベル: SUN&FISH
全国主要レコード店にて発売中

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