【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
毎月連載のPhile-web特別企画「Sound Adventure(サウンド・アドベンチャー)」では、オーディオ・ビジュアルエンターテインメントの最前線で活躍される評論家の方々を「ナビゲーター」に迎え、いま最も注目を浴びるデジタルエンターテインメントのスタイルを徹底探求します。最新オーディオ・ビジュアル製品のレビューやハンドリングレポートも毎回紹介して行きます。
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム

今年の秋も深まり行くなか、家庭で楽しむホームシアターの「サウンド」にいま注目が集まっている。今回はボーズのフロントサラウンドシステム「3・2・1 GS Series II」で、話題のアドベンチャー映画『サハラ 死の砂漠を脱出せよ』のDVDタイトルを視聴し、ホームシアター・サラウンドの感動をとことん追求してみたい。

秋の夜長には、家族でDVD作品を楽しむのも充実した過ごし方の一つだ。この秋冬には今年公開された大作映画のDVD化が早くから発表されていることに加えて、手軽に導入できるホームシアター向けの機器も次々と新製品が登場している。中でも注目したいのが、薄型大画面テレビに簡単に追加できるカジュアルホームシアター製品だ。

今年の年末もカジュアルホームシアターのブーム到来を予測する折原一也氏

エントリークラス向けにホームシアターに必要なDVDプレイヤーとアンプ、スピーカーをセットにしたパッケージはもちろんのこと、2本のスピーカーだけでサラウンドを再現するフロントサラウンドを採用することで、より手軽に設置できるようにした製品もステップアップとして広く受け入れられている。ボーズのフロントサラウンドシステム「3・2・1 GS Series II」もその一つで、DVDプレイヤーを内蔵したメディアセンターと小型のスピーカー2本という、重低音を再生するベースユニットという簡単に設置できるオールインワンの構成となっており、テレビを置いたシアタールームに追加するだけでDVDの映画をサラウンド音声で楽しめるようになる。

本作品は、アメリカを代表するベストセラー作家、クライブ・カッスラーの作品から、全世界で1億2000万部以上の売上げを誇る<ダーク・ピット>シリーズの人気エピソード「死のサハラを脱出せよ」を映画化したものである。シリーズの中で主人公を務めるダーク・ピット(マシュー・マコノヒー)という冒険家が、今回はアメリカで南北戦争の時代に莫大な財宝とともに行方不明になった幻の甲鉄艦(全体をよろいに包まれたような戦艦)テキサスの存在を、西アフリカで発見されたある一枚の金貨によって確信し、財宝の眠るサハラ砂漠へ向かう。

一方、WHOに所属しているエヴァ博士(ペネロペ・クルス)は、ナイジェリアで発生していた疫病の原因を突き止めるために砂漠に向かい、そこでダーク・ピットに出会う。二人は疫病の原因と宝を探し求めるに当たり、ある大きな陰謀に巡り合うこととなり、壮大な冒険アドベンチャーが繰り広げられるというストーリーである。

今回の視聴はボーズ株式会社の視聴室にて行なった。

シリーズの全貌については、DVD発・販売元のアミューズソフトエンタテインメントと原作を出版する新潮社のコラボレーションにより、DVDパッケージの中に、これまでのダーク・ピットシリーズの全容がわかるカタログが封入されており、原作ファンにも、あるいは初めて『サハラ 死の砂漠を脱出せよ』に触れる人にも楽しめるようになっている。

本作品の音響面に関する魅力については、大きく3つのポイントとなるシーンが挙げられる。はじめに冒頭の甲鉄艦テキサスの、砲撃と集中砲火による戦闘シーンだ。迫力溢れる銃撃戦の金属音・重低音が演出するサラウンド効果によって、瞬時に物語の舞台の中に引き込まれてしまうだろう。物語の中盤には、主人公ダーク・ピットが宿敵のカジーム将軍と初めて遭遇し、水上を縦横無尽に駆けめぐるボートでのチェイスシーンがある。そして、甲鉄艦を見つけたダーク・ピットが、最新鋭のヘリコプターや戦車を駆使して戦うクライマックスでは、様々なサラウンドの醍醐味を味わうことができる。


オープニングから作品の世界に引きこまれるサウンドがある

折原(敬称略)  市原さんはご自宅にホームシアターをお持ちなんですか。
市原(敬称略) 自宅では5.1chのサラウンドシステムを組んでいます。はじめたきっかけはやっぱり音の広がりで、「これはVHSではもう観られないな」というところから、どんどんDVDの音響とかにこだわってしまいました。今回は『サハラ 死の砂漠を脱出せよ』をフロント2chでサラウンドを再生するシステムで聴けるということで、すごく興味を持っています。

編集部 では始めに冒頭の「甲鉄鑑テキサス」の戦闘シーンを再生したいと思います。

折原 これは結構空間が見えますね。
市原 そうですね。砲弾が行き交うところがとてもリアルに聴こえます。
折原 高さの表現がすごく出ています。ライフルが着弾する金属音などもすごく面白いですね。やはり空間の広がりというのがすごくできていて、船の内部のシーンだと、上の方で行われている銃撃戦の「高さ」の表現がすごくしっかりしていますね。あとは、轟音もあるシーンなので、アクション映画のエッセンスが詰まった聴き所の多いシーンですね。
市原 冒頭から客を引き込めるシーンがちゃんとそろっていますから。

シアタールームがたちまち“冒険の地”に早変わりした

編集部 次に「川の銃撃戦」を再生してみたいと思います。

市原 チャプター6ですね。チャプタータイトルにもなっている「パナマ」というのは作戦名です。このシーンでは主人公たちが悪役のカジーム将軍とボート・チェイスを繰り広げます。
折原 ご自宅でやっていらっしゃるサラウンドシステムと比べていかがですか。
市原 低音がすごく響いてきますよね。エンジン音にすごく迫力がある。こういう銃撃の音って、結構気にしているんですよ。
折原 DVDタイトルについてはアメリカ版と仕様は異なる点があるんですか。
市原 基本的には、アメリカ版の仕様をそのまま日本用にローカライズした仕様になっています。ただアメリカ版はDTSが入っていません。
折原 国内外で確かに、音声トラックが違うケースは結構ありますよね。
市原 そうですね。DTSで観られるというのが、日本版の特徴でもあります。
折原 それは重要なポイントですね。
市原 僕も一つ今回のシステムで試してみたいシーンがあるんですけれども、それを観てもいいですか。チャプター13です。
折原 割に静かなシーンでも、面白いところがあったりするんですよね。
市原 はい。壊れたプロペラ機を使って、主人公が砂漠の中であることをするシーンがあるんですよ。その時の風の音とかが、すごく楽しめるんじゃないかと思いまして。
折原 移動感がものすごく出ていますね。
市原 そうですね。ここら辺はもう、劇中でも大きな見どころの1つなんです。
折原 クライマックスに近いシーンですよね。
市原 そうなんですよ。
折原 シーンの詳しい内容に関してはDVDの発売前なのでまだ紹介できないと思いますが、風を切る音が移動していく表現を楽しむことができますね。

ホームシアターのエンターテインメント性をギュッと詰め込んだ作品だ

編集部 それでは最後にクライマックスの戦闘シーンを再生してみたいと思います。

市原 本当に何か、これだけの数のスピーカーでそんなに臨場感のある音が楽しめるのかなって、試聴する前は思っていました。ボーズならではの独自技術が製品に活かされているからなのでしょうけれども、ちゃんと感じますね。

折原 このスピーカーを聴いてから、普通の2chで聴いてみると全然違うと思います。
市原 違うと思いますよ。ウーファーの低音もしっかりしているので、その迫力も楽しめますね。
折原 クライマックスのシーンで、ヘリコプターが旋回して移動していくシーンの音の近さや包囲感をすごく感じるということ、移動していく感じがとても印象に残りました。あとは、セリフの分離とかもありますよね。
市原 そうですね。セリフは確かに聴きやすかったですね。
折原 結構サラウンド感も、色々な種類のサウンドが楽しめて、全体を通してすごく聴きどころ満載という感じですよね。
市原 そうですね。実際に、特撮は『007』のスタッフが入っていますし、プロデューサーはトム・クランシーの『ジャック・ライアン』シリーズをやっていた人です。ですから、ノンストップ・アクションの見せどころというのは、しっかり心得ている人たちが数多く参加している作品です。

折原 ペネロペ・クルスも良い味を出していますね。
市原 ペネロペとマシューの二人が来日したときは、ちょうど彼女が、トム・クルーズに代わる新しい彼氏を連れてきたというところで話題になりましたけどね。今回の作品では本当に、本格的なアクションを頑張ってくれているという感じです。
折原 ストーリーが面白い点も非常に魅力的に感じました。アメリカらしいポジティブシンキングな一面もあり、笑いもちりばめられていて、本当に家族で集まって楽しめる作品だと感じました。
市原 やはり原作がしっかりしているということもあると思います。そう言っていただけると、うれしいですね。作品を観ていただく方々にも、ご家庭でアドベンチャーを楽しんで欲しいと思います。

『サハラ 死の砂漠を脱出せよ』の作品中には、サラウンド音声で聴くことによって魅力の増すシーンが数多くある。最初の見せ場となるのが冒頭の甲鉄艦が登場するシーン。アクション映画に数多く見られる銃撃戦のシーンというだけでなく、遠距離から甲鉄艦に銃撃を行い、銃弾が弾かれる甲高い音は、通常の銃撃戦の迫力ある低い音以上に音の方向を感じさせてくれた。また、カメラが甲鉄艦内部に移ってからのサラウンド感も聴き所で、甲鉄艦の外から聞こえてくる銃声が頭上方向で響き、目の前にある小型スピーカーから再現されている空間であることを忘れてしまった程だ。時折響くロケット弾の轟音もサブウーファから空間の振動となって響く。

今回作品の魅力を語っていただいたアミューズソフトエンタテイメント宣伝部課長の市原明氏(左)と折原氏。3・2・1 GS Series IIのサウンドに引き込まれるふたり

次なる聴き所は、モーターボートを使って主人公たちが水上のバトルを行うシーンだ。水上を進むボートによる波音に加えて、平行して走ったボートを付けて銃撃を行うシーンが続く。このシーンも目の前をかすめていく銃弾の移動が伝わる。この後ストーリーでは「パナマ作戦」が実行され迫力あるシーンが展開されるが、その詳細はここでは伏せておこう。

もう一つがストーリー後半に見られるヘリコプターが近くを移動するシーンだ。ヘリコプターのプロペラ音は低音から中音まで力強く響き、プロペラの回転する向きに応じて音の移動方向が変わるため聴き所のポイントとなる。特に目前でヘリが旋回して斜めを向くシーンでは目前から後方に規則的に音が繋がり、緩やかに向きが変わり上昇し遠ざかっていく様まで分かるのは流石だ。

薄型大画面テレビの大ブレイクによって家庭でDVDを楽しむ人も増えている。そこで次にこだわりたいのが、映画視聴ではやはり音の環境だろう。ホームシアターと言うと難しそうに聞こえるが、フロントサラウンドならば小型のスピーカーを設置するだけと簡単にはじめられるものだ。映画ファンには是非導入をお勧めしたい。

【今回視聴した作品】
サハラ 死の砂漠を脱出せよ
¥3,129(税込)
2005年10月21日発売

●原作:クライブ・カッスラー「死のサハラを脱出せよ」(新潮文庫刊)  ●監督:ブレック・アイズナー ●出演:マシュー・マコノヒー/ペネロペ・クルス/スティーヴ・ザーン ほか ●音声:英語DTS5.1ch/英語5.1ch/日本語5.1ch/英語コメンタリー2ch ●字幕:日本語/英語 ●ディスク仕様:片面2層 ●収録時間:約124分 ●特典ディスク付2枚組 ●発売・販売元アミューズソフトエンタテインメント
>>「サハラ 死の砂漠を脱出せよ」オフィシャルDVDサイト

>>アミューズソフトエンタテインメント

【今回視聴に使ったシステム】
BOSE フロントサラウンドシステム
3・2・1 GS Series II
¥188,790(税込)
2005年4月21日発売

>>ボーズの製品紹介ページ
>>製品データベースで調べる


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折原一也(Kazuya Orihara)

埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。


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