【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
毎月連載のPhile-web特別企画「Sound Adventure(サウンド・アドベンチャー)」では、オーディオ・ビジュアルエンターテインメントの最前線で活躍される評論家の方々を「ナビゲーター」に迎え、いま最も注目を浴びるデジタルエンターテインメントのスタイルを徹底探求します。最新オーディオ・ビジュアル製品のレビューやハンドリングレポートも毎回紹介して行きます。
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム

今回は音楽誌「キーボード・マガジン」の編集長としてご活躍されている大山哲司氏に、電子ピアノの楽しさを紹介していただいた。さらに今回は最新の電子ピアノとボーズのスピーカーシステム「M3」の組み合わせを大山氏が試奏し、“良い音”で楽しむ電子ピアノの魅力を検証する。
※今回のレポートでは2006年3月3日に発売される「M3」のプリ・プロダクションモデルを使ってテストを行っています。

「キーボード・マガジン」編集長・大山氏とピアノの出会い

Phile−web編集部(以下:PW)
 大山さんはお仕事ではもちろん、プライベートでも頻繁に電子ピアノに触れていらっしゃると思いますが、あらためまして普段電子ピアノをどのように使われていらっしゃるのか教えていただけますか。
大山哲司氏(以下:敬称略) 仕事関係では楽器の雑誌をつくっていますので、メーカー各社様の新製品を中心に色々な製品を試奏する機会があります。自宅では電子ピアノは使っていないのですが、昔のRhodesのピアノと、あとはシンセサイザーでピアノの音を出して弾くことが多いです。
PW ご自身でピアノの演奏を始められたのはいつ頃からですか
大山 ピアノを始めたのはもう3〜4歳の頃からです。現在はバンド活動のほかに、シンセサイザーとDTMツールを使って作曲などもしています。
PW プライベートではどんな音楽を中心に聴いていますか。
大山 職業柄、洋楽/邦楽を問わず、いろいろなものを聴いていますが、個人的にはやはり1970〜80年代のポップス、ロックが一番落ち着きますね。

PW 大山さんが編集に携わっていらっしゃる「キーボード・マガジン」は、どういった読者の方に、どのようなメッセージを届けようとする雑誌なのでしょうか。
大山 とにかく、「キーボード・マガジン」に限らずリットーミュージックの出版物全部がそうなんですけれども、「楽器を演奏することはこんなに楽しい」ということを読者の皆さんに知っていただきたいと考えています。「キーボード・マガジン」は鍵盤楽器が中心なんですけれども、鍵盤は触ればすぐ音が出ますので、そういった面でも初心者にも取っ付き易いのではないでしょうか。また小さいころピアノを習っていた方も大勢いらっしゃると思います。そのような方々にも今からでも触っていただき、もう一度演奏することの楽しさを思い出して欲しいと願っています。もちろん、うまく弾けるようになればそのぶん楽しみが増してくるので、上達するプロセスに当たってのノウハウをお手伝いできればというふうにも思っています。

大人になって楽器を始める音楽ファンが増えている

PW 「キーボード・マガジン」の読者には、最近ピアノを始めた、或いは大人になって再度チャレンジするといった方は増えているんですか。
大山 例えばギターなどは顕著なのですが、学生時代にバンドをやっていて、最近また始めたという方はかなり増えていますね。ピアノに関しても仕事をリタイアされて、それから教室に行かれてジャズピアノを習っている方も増えているようです。
PW やはり若い層だけではなく、今はご年配の方も楽器を楽しむようになり、アマチュアレベルで熱心に活動される方も増えてきていますよね。
大山 そうですね。楽器の種類や楽しみ方は実に様々で、もうパーカッションだけでアンサンブルされているグループもあったり、年配の方でも単に昔のロックばっかりやっているわけではなくて、いろいろな音楽を幅広く演奏している方がいらっしゃいますね。

大山哲司氏プロフィール

リットーミュージック社刊「キーボード・マガジン」編集長。幼少の頃にピアノをはじめる。現在も自宅ではRhodesピアノ、シンセサイザーとDTMツールを駆使してインディーズレーベルから自身の作品をリリースしている、ミュージシャンとしての顔も持つ。ロック、ポップス、フュージョン、ファンクなど、幅広い音楽を愛し、自他ともに認める音楽マニアでもある。

>>「キーボード・マガジン」最新号の詳細

入門機と言われる電子ピアノでも充実した機能とサウンドが楽しめる

PW 電子ピアノがシンセサイザーと大きく違う点はどんなところでしょうか。
大山 電子ピアノはやはりアコースティックピアノを弾いたときの音のニュアンスが、シンセサイザーで弾くよりも豊かに表現できるようになっています。
PW 最新の電子ピアノのトレンドは、キータッチや音の感じなどをどんどんアコースティックピアノに近付けて行く方向にあるのでしょうか。
大山 進化の方向性は2通りあります。サウンドに関してはアコースティックピアノのニュアンスにだんだん近付いてきています。もう1つは機能面で、例えばレッスン機能が搭載されたり、譜面立てに電子表示の譜面が流れるようになっているモデルもあるなど、どんどん充実してきています。

PW それは、ピアノがより入門者にとって親しみやすい楽器になってきているということでしょうか。
大山 そうですね。ピアノを習っているお子様などが、飽きずにピアノのレッスンができるようになっていますね。アコースティックピアノは音色が1つしか出ないですけれども、電子ピアノではストリングスの音なんかも出ますから、楽しみ方の幅も広いのではないかと思います。
PW 電子ピアノにはユーザーのニーズが日々反映されているように感じますが、現在電子ピアノに一番必要とされていることはどんなことなのでしょうか。
大山 ステージ用途のピアノもありますが、家庭で楽しむ場合には、弾いていてどれだけ自分が気持ち良いかということだと思います。最近は低価格でもすごくクオリティの高い製品が次々と出てきています。やはり、高い音と一番低い音の両方ともバランス良く出すのが難しいとされていて、小さい音が小さく聴こえるというのは当たり前だと思いますが、小さく弾いても実際に弦をたたいているようなニュアンスが感じられるということが、クオリティの高さであるとも言えます。

ピアノの入門者にも楽しめる豊富な付加機能


PW 電子ピアノの上手な遊び方として、大山さんから何かアドバイスをいただけますか。
大山 もちろん行く行くは上手に弾けるようになるのが一番楽しいと思いますけれども、先ほども申し上げたように、色々な音色のバラエティーが電子ピアノには入っていますので、それらを弾きわけて楽しんだり、あとは付加機能として様々なリズムパターンをプリセットした製品や、レコーディング機能が搭載された製品もあります。自分で弾いた伴奏をレコーディングしておいて、それに合わせて、いわゆるアコースティックピアノでいう連弾みたいなものが一人でも楽しめます。バッキング付きの演奏を楽しめるということが、アコースティックではできない電子ピアノならではの楽しみですね。
PW ピアノを習い始めた段階でも結構楽しめてしまう機能が、最近の製品にはあるということですね。
大山 そうですね。電子ピアノでも、高いものでは30〜40万円する製品もあります。低価格の電子ピアノでも音のクオリティは遜色ないのですが、高級機であればその分だけ付加機能が多く搭載されてきます。あと高級機との違いは内蔵スピーカーのクオリティです。最近の電子ピアノは内蔵スピーカーの技術も進化していて、スピーカーを搭載する位置を色々と工夫したり、DSPとの組み合わせで臨場感を再現しているようなものがあります。また、バーチャル技術でグランドピアノの音場をつくてみせたりといったものなど、各社ともにかなりの工夫を凝らしていますね。

PW 電子ピアノのスピーカーも音質が求められ、技術面でも各社が凌ぎ合っているということは、一方で良い音を奏でる外付けタイプのスピーカーにも注目が集まっているということでしょうか。
大山 そうですね。内蔵スピーカーも弾き手が聴いていて一番気持ちが良いように設計され、セッティングされていますが、一方で音色の好みや、ピアノを弾く環境に応じて細やかな対応ができる点が、外付けタイプのスピーカーの良いところだと思います。例えば深夜に小さい音量で鳴らす必要があることもありますからね。
PW 外付けタイプのスピーカーを選ぶ際に重要なポイントはどこにあるのでしょうか。
大山 楽器自体が持っている音色を一番素直なかたちで、ナチュラルに伝えてくれる製品がベストだと思います。また、電子ピアノの中でもステージタイプのものでは内蔵スピーカーが付いていない機種もあります。そういった製品の場合は外付けスピーカーが不可欠であり、低音から高音までフラットに、ナチュラルに聴こえるスピーカーがベストだと思います。

ボーズ「M3」のコンパクトさ、ナチュラルなサウンドに驚く

PW ボーズのスピーカーシステム「M3」を初めてご覧いただいた際の第一印象を教えてください。
大山 第一印象は、もうとにかく想像していたよりも小さくて、軽いなというところですね。この程度の大きさだと、電子ピアノの限られた奥行きでも本体の上に直接置くことができます。シンセサイザーの場合でも、トップのパネル上にはボタンとかスライダーなどがたくさん付いているんですけれども、この位の大きさだったら、置くスペースを確保することができますね。また最初にサウンドを聴いたときの印象ですが、音を絞った際に音量は小さくなりますが、音の存在感がそのままちゃんとあるなという感じでしたね。

PW さらに今回はカシオの電子ピアノ「PX-310」と「M3」をつないで試奏をしていただきましたが、あらためてどのような印象をお持ちになりましたか。
大山 ピアノという楽器は、ほかのどの楽器と比べても音域が広いのですが、その一番高い音から低い音まで、音域によって特にどこに癖があるでもなく、全域に渡ってフラットに、ナチュラルなサウンドを聴くことができました。おそらくどのような電子ピアノと組み合わせても大丈夫だろうと思います。音楽もジャンルを問わずに使えるのではないかと感じています。この良さは、音のバランスの良さにあるのではないでしょうか。楽器の持っているポテンシャルをそのまま音にして出しているからだと思います。

様々な用途に便利な使い方ができるスピーカーだ

PW 実際に試奏されてみて、電子ピアノと「M3」とで、ピアノの入門者にとってもこんな遊び方ができるんじゃないかといったご提案みたいなものはございますか。
大山 ピアノとスピーカーのストレートな組み合わせでというと、もう本当に弾いて、良い音を楽しむということに尽きると思うんですけれども、デジタルピアノをベースにして、例えばシンセサイザーであったり、パソコンと組み合わせて曲をつくったりする人もいると思います。そうした場合のモニターとしても「M3」は大変適していると思います。電子ピアノにはオーディオのインプット端子が付いている製品があります。そちらに、例えば「iPod」でもCDプレーヤーでも再生機器を入力して、そのサウンドを出力しながら一緒に弾いて楽しむという遊び方もできると思います。

PW 好みの音楽を伴奏にしてしまうことができるわけですね。
大山 あとは、最近の電子ピアノには大抵バッキングパターンやデモンストレーションの曲データが内蔵されていますので、それを再生しながら鍵盤を弾くという楽しみ方もありますね。こういった使い方の場合は、スピーカーもより良いものだと楽しさも増しますよね。夜に練習したい時などにはヘッドホンを付けている方も多いと思いますが、「M3」はボリュームを絞った小さい音でも音像がしっかりとしているので、ヘッドホンの制限なく演奏が楽しめるのではという感じがしていますね。

プロ志向のユーザーもクリエイティビティを刺激されるはずだ

PW また、ピアノの熟練者にとって「M3」はどのように活用できそうですか。
大山 電子ピアノに限らず、やはりキーボードにはすごく向いているスピーカーだと思います。シンセサイザーには大抵スピーカーが付いていないので、何らかの音出し装置が必要になるんですけれども、シンセサイザーになると、フルオーケストラの音から、ピアノはもちろん、ギターの音やベースの音など、ありとあらゆる音が出ます。どの音を出してもナチュラルに聞こえるということが、やっぱり一番重要なことなのかなと思います。「M3」のようにその条件を満たしてくれるスピーカーはそうそうありませんね。それから、やはり「小さい」ということも大きな魅力です。キーボードプレーヤーは鍵盤があって、人によってはパソコンがあったり、音源モジュールがあったりと、すごく周辺が雑然とするパートなんです。「M3」は、ちょっとしたスペースを見つけて置けるというところが非常にいいですね。また、従来のシンセサイザーはハードウェアが中心だったんですけれども、最近はソフトウェアのシンセサイザーが結構出回っています。プロのミュージシャンの方などは、ノートパソコンと一緒に持ち歩いて、例えばツアー先のホテルで、それで曲づくりをするという方もいらっしゃいます。そういうときのモニターとしてもすごく便利だと思います。

PW これまで外付けのスピーカーはどうしても周辺機器というイメージが強かったように思います。今回のカシオ「PX-310」との組み合わせでは偶然カラーリングもマッチしましたが、「M3」はひとつの楽器としても楽しめそうですね。
大山 そうですね。普通の楽器、例えばバイオリンにしてもギターにしても、特にスピーカーはなく、楽器本体から音が出ているわけですよね。電子楽器の場合はどうしてもスピーカーが必要になってくるわけですが、あまり大きいとスピーカーの存在感というものを意識してしまって、弾いている時に何か楽器を弾いている感じじゃなくなってしまうことがあると思うんです。この位の小ささだと、もうスピーカーを意識しなくて、何か楽器から本当に音が出ているような雰囲気で弾けるのではないかと思います。

【試奏したデジタルピアノ】
CASIO
"Privia" PX-310
\78,750(税込)

>>カシオの製品紹介ページ
>>e-casio ONLINE SHOPPING
【試聴したスピーカーシステム】
BOSE
Micro Music Monitor (M3)
\49,980(税込)
発売予定日:2006年3月3日

>>ボーズの製品紹介ページ
>>ボーズ・エクスポート・インク
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