女性もデザインだけでなく、音質・機能で製品を選んでいます
PW お二人にとって、ホームシアター、オーディオの再生装置とはどうあるべきだとお思いになりますか。例えば、しごく簡単な方がいいとか、音質だけははずせないとか。
岡村 当然、音質が良くなければ話にならないと思いますよ。
PW やはり音の良しあしというのは、選択のとき気になりますか。
岡村 もちろん。ただ、そういう人は、女性には少ないと思いますけどね。置き場に困らないとか、コンパクトとか、そういうことは大事ですよね。
渡部 そうですね、総合的に見てしまいますよね。音もそうだし、コンパクトさとか、トータルですよね。
PW それらは両立できないと思っていらっしゃいますか。
渡部 あんまり考えたことはありませんでしたが、今だったらあり得るのかなと思います。そういう製品をあまり知らないのかもしれないですね。
PW 例えば、お二人はオーディオ製品を購入される際はどういう基準で選ばれるんですか。
渡部 機能、コンパクトさ、価格、ビジュアルですね、私の場合は。
岡村 そういう順番ですか?
渡部 たぶんそうですね、自分の中では。
PW 機能は、具体的にどういうものですか。
渡部 やはり使い勝手がいいとか、音がいいとか。
PW 一応音質は、基準として高い方にあるのですね。
渡部 そうですね。やっぱり家族がそういうものを好きで高いものを買って、それを聴かされちゃっていますから、いまさら安いものを買っちゃったら、きっと満足できないと思います。
PW いまさら「後退」はできないということですね。岡村さんはいかがですか。もちろん、お仕事ではそういう基準があると思うんですが。
岡村 もちろんあります。私は機能と音質を除けばデザインが一番大切です。女性はデザインを重視する人が圧倒的に多いと思います。ボーズは私の好きなブランドですが、その理由として大きいのが製品のデザインです。音が良いのはもう分かっていることなので、音が良いメーカーをたどっていって、一番は結局ボーズさんだとなるわけですね。デザイン性と音質というのは案外その次です。ただ、それはパーソナルな部分であって、仕事をする上では機能重視、音質重視です。やはり、どうしてもインテリアからはずせないですよね。部屋の目立つところに設置するわけだし、あまり安っぽいデザインだと飽きてしまいますし。
女性にとってブランド「イメージ」はとても大切
ボーズ これは私のイメージなんですが、女性の方の多くは音質を非常に重要視しているけれど、音質の良い・悪いを比べていく手間を面倒に感じてしまうので、例えばデザインだったり価格だったり、別の要素での満足を求めてしまうのでしょうか。本当は音の良いものが欲しいけれど、音の良し悪しをどうやって調べればいいのかわからないとか、あるいは仮に販売店へ行っても、色んなスピーカーの音を聴き比べることがもう面倒だというふうになってしまうのでしょうか。
岡村 女性は特に、「良い音」の価値基準がわからないと言われますよね。
渡部 情報も少ないんですよ。男性誌では取り上げられますが、女性誌ではオーディオ情報がほとんどありません。
岡村 それは本当にあると思いますね。例えば製品のパンフレットを見ていても、私はかなりわかる方だと思いますが、大抵の女性は内容がわからないと思います。結局は「よくわからないけど、デザインがよくて、安くて、小さいものでいいや」ということになってくると思うんです。オーディオはまず入り口の敷居が少し高くなっているだけだと思います。ただ、それを伝えていく立場になった時に、全くわからない素人の女性にも音の良さの違いがわかるように伝えるのは、また難しいことだと思いますね。
ボーズ 当社の場合「あのボーズがこんなかわいいオーディオを出した」という内容の記事を女性誌でしばしば掲載していただくことがあります。記事を読んでくださった女性の方に興味持っていただき、「ボーズの製品って音が良いよね」であるとか、「デザインがかわいいよね」というふうに、色んなイメージで製品を手にとってもらえれば嬉しいですね。
岡村 ボーズさんの場合は女性にとって、「音とデザインの良いブランド」というイメージがあるのかもしれませんね。ブランドイメージの持つ魅力も、女性にとってはオーディオ製品を選んで買う時の大切な選択基準のひとつかもしれません。
音の良い・悪いは一般には「正直わからない」というイメージがある
ボーズ ホームシアターシステムは必ずしも多機能である必要はなくて、当社はあえて音楽だけ聴きたい人のための「音楽ホームシアター」があってもいいんじゃないかと考えています。でも「純粋な単機能が欲しい」という欲求は、本当は多くのユーザーがお持ちなのかもしれませんが、一方で用途毎に個別のシステムを持たなければならないという面倒さもあります。お二人は「女性にももっと良い音を聴く機会が増えたらいいのに」と感じることはありますか。
渡部 私の周辺の女性の友達には音楽が好きな人が多くいて、あるアーティストのコンサートやライブに追っかけに近いほど頻繁に行っている人もいます。そういう人は交通費や旅費を惜しまずに使っている一方で、家に遊びに行くと、オーディオにはお金をかけていないケースが多いようです。これは何故だろうと今、考えていましたが、オーディオを知ろうとしていない女性も多いのかなと思います。コンサートの席の位置などはすごく気にするのに、家の中の音の良さというのはあまり気に掛けていないケースが私の周りでは多いと思います。
岡村 単純にアーティストを身近で見たいということですよね。
渡部 そうかもしれませんが、やはり生の音が一番いいですよ。大抵の方は収入に応じて、趣味にかけるお金が決まっているじゃないですか。よく、ゲームが流行ると雑誌が売れないと言われていますが、それと同じで、コンサートに頻繁に行く人は家の中の音楽再生環境にどうしてもお金をかけられないというか、そっちに関心が行っていないのだろうと思います。そちらに関心が向かって、こんなに良い音だということがわかったら、好きなアーティストの曲をもっと感じ取りたい、聴きたいと思うのかと。
岡村 でも、それはちょっと微妙なところだと思うんですよ。やはり最終的に、それがすべての女性には当てはまらないと思うし、アーティストにもよると思うんです。例えば今日、渡部さんがお持ちになったCDは、音楽や音質にこだわっているアーティストが多いし、聴いている方もそこにこだわっているリスナーがついていると思いますが、一方で大抵の作品は、曲が良ければいいとか、歌詞がいいとか、ジャケットがいいとか、そういうものも含めたもっと表象的な部分が多いと思います。歌詞が良いとか、ジャケットが気に入ったとかメロディーが良いというのは、言い方は良くないですけれども、素人でもわかるわけです。音が良い・悪いというのは、一般の人には「正直わからない」というイメージがあるわけですね。理系を苦手な女性が多いのと一緒で、最初からものすごく閉ざされているジャンルであって、これが良い音だよと聴くチャンスに恵まれたとしても、確かに良いけれども、じゃあこれにいくらかお金をかけましょうということまで考えが回るかどうかというのは、やはり現実的には難しいと思います。それは、本当にオーディオに興味がある人でなければ向かわない。
ライフスタイルの観点から気軽に良い音・良い製品に触れてみたい
岡村 ボーズさんの製品を例にとってみると、オーディオを何も知らない人でも、デザインが良いとか、手に取りやすい状態で買ってみたら意外と音が良くて、自然といい音で聴くことが習慣になってしまっている方が多いのではないかと思います。自然と良い音を体験するような状態でボーズさんの製品と向き合っているという状態です。「これは良い音なんですよ。だからみんな聴きましょう」という環境に追い込んでしまうと、女性は一歩引いてしまうというか、構えてしまうところはあると思います。自然と良い音に出会うというか、そういう環境もとても大事だと思います。例えば、量販店や電気店のオーディオコーナーではないところに置いてあるとか、そういうことは女性にとってすごく大事なことですよね。
渡部 インテリアショップのリビングコーナーでオーディオ製品を見かける機会も増えています。こういった場所も女性にとって製品との接点を持ちやすいですね。
岡村 そうですね。ヤマギワリビナ館ってあるじゃないですか。あそこに置いてあるだけで買う人はいますからね。国外メーカーからもそれなりにおしゃれな製品が出てきているので、そういうものを何も知らずに買っていく方も多いと思います。
ボーズ 今年の3月3日には、六本木ヒルズに当社のストアがオープンしましたので、ぜひ遊びにいらして下さい。
岡村 それは素敵ですよね。
ボーズ 当社は今年の3月31日時点で、全国に23の直営店を持っています。実はいずれのお店もショッピングモールや百貨店など、オーディオとは縁の薄い場所に出店しているんです。ユーザーの皆様に、ふだん製品をどんな所でお買い求めになるのかを訊ねてみたら、実際にはオーディオとはあまり関係のない所で買っているという方も多くいらっしゃいました。だとすれば、オーディオとは関係のない、色んな場所でボーズのサウンドを楽しんでもらえるんじゃないかと考えたんです。また、六本木ヒルズ店ではアルフレックス社の家具で店舗をレイアウトし、全体が見渡せるガラスのパーテーションも取り入れたりしながら、リビングや書斎など実際の楽しみ方をご案内しています。まるでインテリアショップのようなゆったりとした空間で、ボーズのサウンドを体験していただけるんですよ。
渡部 そのようなお店であれば、「自分の部屋だったらこのシステムをこんな風における、使いこなせる」といったイメージがとてもしやすいですよね。
ボーズ 遊びに来ていただいた方々に、製品を気軽に手に取っていただけるよう工夫もしています。当社としては今後もライフスタイルとつながる製品のイメージを、積極的にご紹介していきたいと考えています。
渡部 ライフスタイルの中で音楽のある空間と時間を意識して、自分の生活に位置づけていくことはやはりとても重要ですよね。
岡村 そうですね。重要であってほしいですね。
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