【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
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毎月連載のPhile-web特別企画「Sound Adventure(サウンド・アドベンチャー)」では、オーディオ・ビジュアルエンターテインメントの最前線で活躍される評論家の方々を「ナビゲーター」に迎え、いま最も注目を浴びるデジタルエンターテインメントのスタイルを徹底探求します。最新オーディオ・ビジュアル製品のレビューやハンドリングレポートも毎回紹介して行きます。
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム

このごろ流行っている「iPod」に興味はあるのだけれど、どのように使っていいかわからない、自分はパソコンが苦手だから躊躇している、という方も結構いるのではないだろうか。今回はiPodの導入にためらう音楽ファンのAさんと一緒に「iPodのオトナの楽しみ方」を研究してみた。

Aさん(男性・会社員

自宅には約500枚の音楽CDを所有。美空ひばりや50〜60年代の女性JAZZシンガーをこよなく愛するオトナの音楽ファン。パソコンはふだんのデスクワークをはじめ、プライベートではデジカメでの愛犬撮影に活用しているが、デジタル音楽にはまだ一度も使ったことはないという。一方でiPodへの興味は日に日に募るばかりだそう。



今回のiPodアドバイザー:Phile-web編集部スタッフY。Macユーザー歴12年、iPodは使い始めて2年を迎える。


最近周りがiPodを持ち始めるようになったから興味は沸いてきたところ

Phile-web(以下PW) Aさんは普段はどんな環境で音楽を聴いているんですか。
Aさん ボーズのAM-5IIIという3Dのスピーカーシステムです。
PW ご家族はいかがですか?
Aさん 娘はMD付のラジカセを使っています。CDはふだんよく買ってるみたいだしパソコンも達者だけど、今のところiPodは使っていないみたいだね。息子はMDコンポを持っていて、CDはたぶん借りて聴いているんじゃないかな。家内も自分のシステムを持っていて、ふだんは自分の好きな音楽をそれで聴いているようです。

PW これまでにiPodに関する知識はどれぐらい仕入れてますか。
Aさん あまり詳しくは知らなかったけれど、興味はありました。ただ、何となく圧縮するから音は良くないのかなと思っていました。最近かなり年配の人でもiPodを持っていて、一生懸命何か聴いているみたいだね。
PW iPod nanoが登場してから若い女性だけでなく、年配の男性ユーザーも増えている印象がありますね。いまiPodで英会話の勉強をしている人もすごく増えているようですよ。あとポッドキャストってご存じですか。インターネットからダウンロードして聴くラジオも楽しめるんですよ。

「電車の中でヘッドホン」にはちょっと抵抗がある

PW Aさんは電車の中でヘッドホンを付けて音楽を聴いたりしますか。
Aさん あれはもう恥ずかしいからしません。僕と同い歳くらいの人たちが電車の中でヘッドホンを付けているのを見かけたりすると、「いい歳して、何やってるんだろう」と思っちゃうんですよ。だから、僕はもう使わなくなりました。
PW ポータブル機器は音質が良くないから、というこだわりみたいなものはお持ちなんですか。
Aさん それはないですね。
PW そういう意味ではAさんにとって、やっぱりオーディオは非常にプライベートな楽しみということなんですね。
Aさん そうですね。僕の場合は家族と一緒に音楽を聴くということはないし、もう極めてパーソナルな楽しみなんです。そういう意味では、ヘッドホンというものはパーソナルな空間をつくり出すためのものではあっても、それをしていること自体はあまり人に見せるものじゃないと思います。
PW では逆にご自宅のオーディオルームに座って、スピーカーに正対して音楽を聴くということに対しては積極的でいらっしゃいますか。
Aさん とても積極的な方だと思う。だいたい休みの日は必ず電源を入れて音楽を流していますね。。

僕のCDコレクション500枚はiPodに入る?

PW Aさんはいまご自宅に何枚くらいCDをお持ちなんですか。また、ご購入のペースはどれくらいですか。
Aさん CDを買うペースは月に1、2枚程度ですかね。我が家にはいま500枚ぐらいCDがあるんだけれども、常時聴いているのはその内の30枚から40枚くらいかな。あとは戸棚の上にしまい込んでいるので、いちいち取り出すのが面倒になってしまいました。
PW でも、きっとその中に聴けば懐かしい曲もありますよね。
Aさん そうですね。たまにひっくり返して、「ああ、ちょっとこれ聴いてみようかな」と思う時はありますね。

PW その点では、よく聴く曲も、たまにしか聴かない曲も、とりあえず「いつでも聴けるようにしておくことができる」というのが、iPodのようなハードディスクプレーヤーの大きな利点であり、コンピューターで音楽を楽しんでいる多くの人が便利さを感じている点なのだと思います。最近のコンピューターは、ノート型でも40GB以上のハードディスクを普通に積んでいて、仕事やデジカメ写真など色んなファイルをそこに保存しているわけですが、今回ご用意したiPodには一般的なノートパソコンよりも大きめの60GBのハードディスクが搭載されているんですよ。
Aさん そうなんですか。CDだと何枚分が入るんですか。
PW どれくらいの音質で設定するかにもよるんですが、この中に最大約15,000曲ほどが保存できるんですよ。一般の方のCDアーカイブであれば、ご自宅のコレクションが全部この中に保存できるイメージです。コンピューターは、これで色々なことができてしまうわけじゃないですか。だけど、iPodは音楽を聴く、動画や写真を観るぐらいしかできないというシンプルさもひとつの魅力じゃないかと思います。
Aさん 携帯もそうだね。今時の携帯は難しいから、僕は電話の機能しか実際には使っていません。
PW iPodはシンプルフォンみたいな感覚ですよね。コンピューターと接続するから、考え方としてiPod自体がコンピューターに見えるかもしれない。でも実は音楽を聴くためだけの単機能なんですよ。
Aさん CDがなぜ好きかと言うと、1枚1枚聴ける確実なイメージがあるからなんです。自分でプレーヤーにCDをかければ、確実にそれが鳴るわけですよね。リモコンで気に入らない曲は飛ばしてしまえばいいわけだから。僕はまだiPodを使ったことがないから、その辺の使い方がコンピューターみたいで難しいんじゃないかと感じるんです。

聴きたい曲は瞬間的に呼び出したいのだけれど

Aさん そんなに何千、何万曲も入れてしまったら、聴きたい曲を探すのが難しいんじゃないですか。
PW 検索はとても簡単にできるんですよ。コンピューターにCDを取り込む時には、インターネットのデータベースから曲情報を引っ張ってきて保存します。iPodとコンピューターをつないで曲を転送する時には楽曲情報も一緒にコピーされるわけです。あとはiPod上でアーティストやアルバム名・曲名、ジャンル別などの曲情報を使って、沢山の楽曲を保存してあっても、聴きたい曲を簡単に呼び出すことができるんです。

Aさん じゃあ、今回取り込んでもらった僕の「美空ひばり」のアルバム情報も転送されたわけですね。
PW 全部入ってますね。美空ひばりのアーティスト名、楽曲名なんかもすぐにでてきますよ。
Aさん なるほどね。

仕舞い込んだCDの中からも
懐かしい曲をピックアップして聴きたい


Aさん このアルバムの、この1曲はいいんだけど、他のはもう聴かないとなると、僕の場合は部屋の袋戸棚へしまい込んでしまうわけですよ。だからいつも聴きたいCDは、手持ちの500枚から大体20〜30枚をピックアップしています。中でも「頭から全部聴いてもいいCD」ということで厳選すると、10枚くらいかな。
PW お気に入りの曲があっても、頭から全部聴けないアルバムだから仕舞うというのは、勿体ない感じがしますね。10枚だけだと手元もすごく寂しくなりませんか。
Aさん それはそうだね。
PW 本当なら、とりあえずCDは全部手に届く場所に出しておいて、気に入っている順に分類したり、好きな曲だけあらかじめ抜いておくことができればいいわけですよね。
Aさん ああ、それができたら最高だね。そうすると、自分の本当に好きなアルバムを作れるのにね。
PW 一度iPodに入れておけば「あんまり好きじゃなかった曲だけど、今聴いたらどうかな」なんて楽しみ方もできるはずです。常時表に出ている30枚の他、残りの470枚を手軽に聴く手段をiPodが提供してくれたら、その魅力はいかがでしょうか。
Aさん 例えば一つのアルバムから、この曲とこの曲だけという感じで、1曲ずつ選んでiPodに保存することはできるんですか。
PW もちろんできます。いったんコンピューターには全曲保存してしまって、iPodに転送するときに、これはいる、これはいらないと、その時々で自由に選ぶことができるんです。
Aさん ああ、年賀ハガキ作成ソフトと同じ感覚ですね。
PW そうですね。年賀ハガキの住所録チェックと同じ感覚です。いったん手持ちのCDライブラリーを全部コンピューターに取り込んでおいて、それをiPodに転送するか、或いは聴くか聴かないかは毎回自由に選べばいいんです。CDごと仕舞っておいたらもう二度と聴かないということもありますから。


何となくコンピューターの音楽は音が悪いというイメージがある


Aさん
 iPodで再生すると音質的にはどうなんですか。何となく、コンピューターは音が悪いというイメージがあるんですよ。
PW それは、デスクトップミュージックに対する先入観の部分と、実際にはポータブルだからという部分ですよね。音質に徹底的にこだわるのであれば、それは立派なオーディオシステムでCDを聴くのが一番かもしれませんが、iPodを使っていかに「音楽の楽しみ方を広げるか」というテーマに沿って考えるのであれば、今回はどうやってiPodの音質面を補って楽しむのかがもう一つのテーマとなるわけです。もっと気軽に音楽を楽しみたい、折角だからこの機会にiPodも使い始めてみたいという、Aさんのような「大人のユーザー」方は大勢いると思うんです。その方たちに、大人の音楽ファンにふさわしいiPodの再生システムとはどんなものかを考えていただきたいと考えて、今回はこんなシステムを組んでみたんです。

プレーヤー APPLE
iPod(MA003J/A )
アンプ FLYING MOLE
CA-S3
スタンドはGKインダストリアルデザイン社の特注非売品。CA-S3ほか、iPodとCDをセットすることができる
スピーカーシステム BOSE
55WER
今回の試聴はipodを専用のユニバーサルDockに接続し、オーディオシステムとつないで行った

PW iPodに楽曲を取り込む際にはいくつかの圧縮率を選ぶことができます。今回Aさんにお持ち頂いたCDはあらかじめ全部ロスレス、ようするに圧縮をほとんどかけていないフォーマットでiPodに保存しました。今日はそれをこのシステムで聴いていただこうと思います。圧縮してあると、音に迫力やメリハリがなかったり、高域の伸びが足りない、ちょっと歪みっぽい、など感じられる可能性は確かにあります。でも、ロスレスを使うと、その可能性をかなり薄めることができます。
Aさん 今は自分の部屋といっても、そこで音楽を聴けるような環境にはなっていないですからね。装置を置いていないからということが先なのか、それとも部屋が狭いからなのか、様々な条件があるけれど、これから始めることができるのであれば、今の環境に合わせた良いものを選びたいと思いますね。

今の生活環境にぴたりとくるiPodの再生環境が欲しい

PW 今回のシステムを構成した理由ですが、ボーズのスピーカー「55WER」は非常にスペースファクターが高く、そのスタイリッシュさも魅力です。フライングモールのアンプについても同様で、コンパクトかつ難しい操作は一切必要ありません。音の評価も高く、ご覧いただいてわかる通り質感も高いですよね。
Aさん このコンパクトさや組み合わせはカッコイイね。
PW ということで、音質をしっかり聴いていただきましょうか。

Aさん 僕は自宅で音楽を聴く時には、スピーカーとアンプ、プレーヤーのセットがソファから3m近く離れているんですよ。でもiPodが手元にある状態だと、いちいちプレーヤーの方にCDを変えに行かなくても済むんだ、これは便利ですね。
PW iPodはリモコンであり、プレーヤーでもあるという感覚ですよね。
Aさん 僕はいつも聴いているCDは10枚くらいだけど、僕の音楽の楽しみ方の一つとして、妻や子供が出掛けてしまった後に、ボリュームをいっぱいに上げて音楽をガーンと鳴らせば、本当にすっきりするんですよ。このシステムもしっかり鳴っているね。アンプはとても余裕があるじゃないですか、十分出ますよ。
PW 特に今回Aさんがお持ちになったような、電気的な音ではなく、ヴォーカルやアコースティックな楽器のウォームなサウンドには相性もぴったりですよね。昔のタイトルは信号そのものがしっかり録音されているから、圧縮してもそんなに音は悪くならないと思います。

iPodを手に入れたらますますCDを買ってしまうね
   
Aさん こんなシステムが家にあったらますますこれからCDを買ってきちゃうんじゃないかな。ソフトメーカーの方々はiPodが流行るとCDが売れなくなると思っているかもしれないけれど、僕は絶対もっとCDが欲しくなるだろうし、もっと売れるようになると思いますよ。
PW 私もCDは保存のために必要なメディアだと思います。けれども、毎日手軽に音楽が聴けて操作が便利という「使い方」の面では絶対にiPodの方が優れていると感じています。

Aさん 確かにそうですね。僕はインターネットの音楽ダウンロードは、コンピューターのトラブルなんかでデータが消えてしまうのが嫌だから使ったことはないんです。それと、所有感がないですよね。だからやっぱりCDを買っておいてその所有感を感じつつ、だけど操作上はiPodの方が楽だからというくらいが、大人のiPod使いとしては良いのかもしれないですね。
PW 例えば大型のシステムを選ぶのも構わないですし、小さなスピーカーでシステムを組むのも良いかもしれません。ただ、これからiPodを使おうと考えている「大人のユーザー」の方々とは、何よりも「音楽が好き」であり、ハードとしては、システムコンポや一体型でもなく、大型システムでもないものを望んでいる方々というイメージがありました。自分の自由な時間を持ち、スピーカーに正対して聴くという楽しみ方に挑戦してみたいなと考えている方々に、iPodの便利さと本格的オーディオに近い所有感を味わってもらえるものを今回ご紹介してみました。
Aさん だんだんわかってきました。同じCDでも、前はその曲が嫌だったんだけど、例えば時間がたって聴いたときに、「あ、いいな」と思うことがあるんですよ。そういう新たな発見が、たぶんiPodだとできるよね。持っている曲が全部入っているんだから。操作も楽だし、ここにプレーヤーとリモコンの機能が一緒になってるようなものですよね。
PW まさにリモコンの感覚ですよね。それを体感してもらえれば、iPodで音楽を楽しむって、「ああ、意外といいな」と。ヘッドフォンを付けて持ち歩くだけじゃなくて、こういうふうにシステムで楽しむんだったら少しも恥ずかしくないじゃないかと。iPodの「オトナの楽しみ方」はそんな風に広がってもらいたいと考えています。

APPLE デジタルオーディオプレーヤー
iPod (MA003J/A )
\46,800(税込)
60GBハードディスクを搭載した動画再生対応のiPod

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FLYING MOLE デジタル・プリメインアンプ
CA-S3
\70,000(税込)
CDジャケットサイズの高音質デジタルプリメインアンプ


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BOSE スピーカーシステム
55WER
\102,900(ペア・税込)
設置場所を選ばないスタイリッシュ&高音質なロングセラーモデル

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