【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
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毎月連載のPhile-web特別企画「Sound Adventure(サウンド・アドベンチャー)」では、オーディオ・ビジュアルエンターテインメントの最前線で活躍される評論家の方々を「ナビゲーター」に迎え、いま最も注目を浴びるデジタルエンターテインメントのスタイルを徹底探求します。最新オーディオ・ビジュアル製品のレビューやハンドリングレポートも毎回紹介して行きます。
【毎月連載】 オーディオ・ビジュアルファンのためのエンターテインメントコラム
ホームシアターでLIVEを楽しもう!

今回は最近のDVDヒットチャートを賑わせている「音楽もの」のDVDにスポットをあててみよう。サラウンド再生といえば、映画の他にもライヴ映像など音楽DVDとの相性も良いはずだ。最新のフロントサラウンドシステムでその魅力を検証した。


野間 いまホームシアターでは「映画を観る」という楽しみ方が一般的だと思いますが、一方で最近のDVDチャートを見ていると、トップランキングを音楽もののタイトルが賑わしていることも多いようです。これからのホームシアターでは「音楽を楽しむ」というスタイルが成長してくるのではないでしょうか。そこで今回は最近の音楽DVDのトレンドなどを佐藤さんにお伺いしながら、ハピネットさんがリリースされている注目ソフトをボーズのシステムで楽しんでいただき、ソフトのクオリティやライブ感、タイトルにこめられた「こだわり」がどれくらい再現されているのかを体験していただきたいと考えています。

佐藤 よろしくお願いします。

インタビュー:音元出版アナログ編集部・野間

音楽DVDの魅力はやはり映像も一緒に楽しめるところだ


野間 音楽DVDを購入して楽しんでいるユーザー層には、最近ではどんな方々が多いのでしょうか。
佐藤 そうですね。非常に難しいところで、洋楽と邦楽では極端にユーザーの顔が変わってしまうという現状があります。最近は音楽もののDVDが非常に活性化されているという認識をお持ちでいらっしゃると思うんですけれども、アイドル系をはじめ邦楽ランキングの常連アーティストのライブもの、プロモーションビデオの人気が高いですね。今回お持ちしたKISSなどは、ターゲット層は恐らく30代以上の方で、中心層は40代前後の方になるかと思います。いわゆる、昔よく音楽を聴いていて、最近なかなか買う機会も少なくなっているけれども、何かのきっかけを与えてあげれば飛び付いてくれる、そういったユーザー層が存在していると思います。どちらかというと、弊社では70年代、80年代に一世を風靡したアーティストたちの、当時のとてもレアな映像などを中心に集めているのが現状です。

今回は(株)ハピネット ピクチャーズユニット音楽企画部リーダー補佐の佐藤明彦氏(写真左)に作品の魅力をご紹介いただいた

野間 DVDとCDの違いと言えば、やはりDVDには映像が入るというところだと思います。DVDは「ライブが観たい」というニーズを掘り起こせるメディアなのかなと思います。
佐藤 その辺を掘り起こしたいという思いはあります。特にライブなんかは、そういった臨場感に画が加わって、本当に会場で観ているような雰囲気がつくれる環境はもう既に、メーカーさんの方でおそろいかと思います。その良さがまだまだユーザーに伝わっていない、そういうジレンマというのは非常に感じています。われわれソフトをつくる側としても、極論で言えば、ユーザーさんが、「2chの音声は物足りないから買わないよ」というぐらいの、そういった市場にまで育ってほしいという希望は常に持っていますね。
野間 その点で、御社の場合はやはりKISSを好んで聴く世代を中心に、DVDであるとか5.1chというものに対する親和性が非常に高い層だと考えているんですか。
佐藤 経済的に余裕のある世代のソフトが中心なので、何かきっかけさえこちらの方から提示できれば、「あ、これ、本当に見たかったんだよね」と反応していただけるのだと思います。当時、テレビかなんかでちらっと見てて、存在自体は知っていたんだけれども、パッケージになって改めて買い直すというユーザーが多いのではないでしょうか。

KISSの最新ステージがホームシアターに蘇る

野間 今回お持ち頂いた作品『KISS/地獄の狂宴〜ロック・ザ・ネイション・ライヴ!』のオススメとなるポイントについて聞かせてください。
佐藤 この作品は今年の4月19日にリリースしたKISSのライブDVDです。2004年に行われたライブツアーの模様を収録したものですが、KISSが再結成してメイクアップをしてやった本格的なロックライブ映像というのはこれが初めてなんです。現メンバーによる最新のKISSの映像がこれで観られるというものです。

タイトルはそれぞれ収録曲が異なる2枚のDVDで構成。初回特典として未発表ライヴCDが付属する

野間 特典映像などはいかがでしょうか
佐藤 タイトルの制作はKISSのプロダクション自らが行っていて、非常に内容が凝っています。洋楽のタイトルでは珍しく、マルチアングル映像なども制作側の強いこだわりがあり、実現されています。
野間 2枚組ディスクの内容はどのように構成されているのでしょうか。
佐藤 DISK1に16曲、DISK2に10曲の計26曲が収録されています。マルチアングル映像はどちらのディスクにも入っている、この「KISSパワービジョン」というものです。恐らくアーティスト自身が命名されたのだと思いますが。
野間 面白い手法のマルチアングルですね。ハードウェアで切り替えるのではなく、画面に表示されるサムネールで選ぶんですね。
佐藤 バンドの4人それぞれのパフォーマンスを個別にピックアップした映像を楽しむことができるようになっています。
野間 これはファンにとってはたまらないですよね。
佐藤 ライブ映像以外のところでも、普段見られないような楽屋のシーンや、彼らの素顔が見られるようなプライベートシーンも入っていて、総収録時間が140分ほどあります。また、初回盤限定のおまけとして3曲入りの未発表ライブ音源CDも付います。
野間 では、さっそく視聴してみたいと思います。

メニュー画面から「KISSパワービジョン」を選択(写真左)。演奏中の画面左側に表示されるマルチアングル映像のサムネール(黄色枠内)を切り替えて、バンドメンバー個別のパフォーマンスを楽しむことができる(写真右)。<写真はクリックで拡大>


迫力満点!ライヴの熱気と臨場感が伝わってくる

野間 ライブの臨場感がそのまま伝わってくるすごい内容ですね。サウンドは5.1chとステレオも収録されているんですか。
佐藤 ドルビーデジタルの5.1chサラウンドと2chステレオです。

野間 ちょっと実験をしてみていいですか。同じ曲の所を5.1chサラウンドと2chステレオで聴き比べてみたいと思います。
佐藤 これはどちらも凄く臨場感が豊かで、ぱっと聴いただけでは違いがわかりませんね。メーカーの方にお訊きしますが、こちらの製品は前方から音を出して、このような臨場感を出していこうというシステムですよね。
ボーズ広報担当 この機械自体は、例えばステレオ2chのサウンドでも5.1chに変換する機能を持っています。例えば音楽は通常、楽曲が後ろから聴こえるということは一部を除いてありません。基本的にはフロント重視なので、むしろ5.1chよりもこうした2つのスピーカーによるフロントサラウンドの方が自然に感じていただけるのではないかなと思います。映画などは、やっぱりその移動感を強調している部分もありますので、そういうものであれば5.1chの方がいいとおっしゃる方もいると思います。弊社としては、音楽中心のライフスタイルの方にはむしろフロントサラウンドをお勧めした方が、結果的に良いのではと考えています。
佐藤 何かそういう開発のコンセプトが非常に伝わってくる感じがします。すごく自然なサウンドですよね。当然、大音量は迫力が出るんですけれども、ボリュームを絞ったときに、非常に音がクリアだという印象を受けます。私が今、自宅で使っているシステムは、ボリュームを絞ると聴こえづらくなり、それがもの凄くストレスに感じて、結果使うのが億劫になってしまう。これならば使い勝手も良く、ストレスなく入れるような感じがしますね。本体の大きさも、すごくコンパクトにまとまっていますし。

野間 現在佐藤さんがお使いのシステムは、後ろにもスピーカーを置くタイプですか。
佐藤 そうなんですが、リビングに置こうとすると、結局後ろには置けないんですよね。泣く泣く部屋のサイドに置いています。コードの結線と配線が面倒なこともあり、リアスピーカーは本当に宝の持ち腐れ状態になっていて、もったいない感じがしますよね。
野間 先ほど音量を絞った際でもクリアに聴こえるとおっしゃっていましたが、視聴するシステムの違いで、作品の内容が良く感じたり、かえってストレスに感じたりするような体験が、一般のユーザーの方にももっとあると良いなと、私は思います。アーティストや録音エンジニアの方など、「こういったものをつくりたい」と考え、作品にこめた気持ちも、それが受け手にまで伝わらないと、その作品自体をちゃんと表現できたことにはならないと思うんですね。
佐藤 全くその通りだと思います。多くの方々に作品とシステムの本当の魅力が体験できれば良いと思います。

高品質な音楽ソフトへの期待はますます高まっている

野間 最近のユーザーの方々は、どのような環境で音楽DVDを楽しんでいるのでしょうか。
佐藤 音楽DVDに限って言えば、やはり今回のような本格的なシステムを使って鑑賞されている方は一部のユーザーに限られているのではという認識を持っています。5.1ch音声の収録に関しても、2chステレオでパッケージをリリースした場合と反響がほとんど変わらないので、そういった意味では、5.1chサラウンドシステムに対する理解が、音楽DVDに関してまだ低いという認識を持っています。

野間 ハピネットさんとしては映画も含めて色々なジャンルのDVDをリリースされていると思いますけれども、御社で音楽事業に力を入れるきっかけとなるものは何だったのでしょうか。
佐藤 当社では約15年前に普及したレーザーディスクから始まって、映画パッケージのリリースを主に行っていましたが、DVDへの切り替えは1998年位からでした。映画のビジネスをやっていると、いろいろなクライアントから「映画もあるけど、こういう音楽ものはどう?」といったお話もいただく機会がありました。今から約3年ほど前からは、そういった音楽DVDへのリクエストがエンドユーザーから非常に多くなってきたことと、今後DVDに力を入れていくのであれば、映画だけでなく音楽のタイトルも揃えていった方がユーザーの満足度も良いだろうということになりました。音楽の商材については新規事業的なとらえ方、考え方で、総合的に映像の事業を広げて行こうというところから始まっています。
野間 今回ご紹介いただいたKISSのライヴDVDのほかにも、例えばこれから御社が発売されるラインナップの中で注目のタイトルがあれば教えていただけませんか。
佐藤 そうですね。7月には昨年元プロコル・ハルムのゲイリー・ブルッカーがロンドン郊外で開催したチャリティー・イベントのライブ映像をリリースします。出演はエリック・クラプトンを筆頭に、リンゴ・スター、ロジャー・テイラー、ザ・ドリフターズ等、超豪華な顔ぶれです。2人のほかにもクラプトンのファンから見るとかなり面白いアーティストが集まって、お互いに名曲を携えて参加しています。「2大巨塔」が集まる華やかさと、通好みな人たちの食指もくすぐる、今夏注目のアイテムの1つです。

良質なソフトと再生機器で音楽がもっと楽しくなる

野間 佐藤さんが普段お仕事をなさる上でのマインドの部分と申しますか、音楽ファンにこんな魅力的なタイトルを紹介したいといった意気込みをお聞きかせいただければと思います。
佐藤 そんな大それた思いを抱いているわけではありませんが、やはり良い映像や音楽を一人でも多くの方に見て欲しい、聴いて欲しいという、そういう単純な考え方ですね。

野間 でも、それが一番重要ですものね。
佐藤 中途半端にやるよりはそれが一番シンプルで良いと考えています。弊社ではマスで広がるようなアイテムをやっているわけではないので、あるジャンルに本当に強いスタッフが集まって、例えば3,000人でも良いので、音楽好きのファンに満足していただけるようなものをリリースしていくというのが基本ですね。
野間 佐藤さんとしてはロックが好きなんですか。
佐藤 私はどちらかというとポップスの方が好きなんですよ。あとはロック以外の、いわゆるボサノバとか、ジャズとかソウルとか。バリバリのロックというよりは、80年代のブリティッシュロック、ポップ系の方が好きですね。
野間 ホームシアターの場合も、結局は音がすごく良いとか、映像がすごくきれいであることよりも、結局は複雑な操作なしに、大人も子供も見たいものを入れれば見られる手軽さ、魅力的な作品が「いつでも楽しめる」ということが、本当に一番必要な要素なんじゃないかなと思います。
佐藤 やはり映像や音楽を高機能なシステム機器が高品位に再生してくれるというのは今の時代の楽しみ方であると思います。私たちも、例えば60年代、70年代の、恐らく「幻の映像」と呼ばれるような作品がまだ数多く存在していて、そういった素材を仮に将来的に作品化した時に、音声や映像の痛んでいる部分をある程度ハードウェアの力で自然に再現してくれれば良いと思うし、そんな機能をさりげなく搭載している製品は凄く魅力的だと思います。

KISS/地獄の狂宴〜ロック・ザ・ネイション・ライヴ!('04 米)
¥4,935(税込)
2006年4月19日発売

●音声:ドルビーデジタル5.1chサラウンド/ドルビーデジタル2chステレオ ●字幕:日本語 ●ディスク仕様:片面2層 2枚組 ●収録時間:136分 ●特典ディスク付2枚組 ●特典:未発表ライヴCD(初回限定)、初公開!!バックステージ・リハ〜ツアー初日から ●発売元:デジタルサイト(株) ●販売元:(株)ハピネット

>>「KISS/地獄の狂宴〜ロック・ザ・ネイション・ライヴ!」オフィシャルDVDサイト
BOSE フロントサラウンドシステム
3・2・1 GSX
\241,500(税込)
2006年4月15日発売

>>ボーズの製品紹介ページ
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