迫力満点!ライヴの熱気と臨場感が伝わってくる
野間 ライブの臨場感がそのまま伝わってくるすごい内容ですね。サウンドは5.1chとステレオも収録されているんですか。
佐藤 ドルビーデジタルの5.1chサラウンドと2chステレオです。
野間 ちょっと実験をしてみていいですか。同じ曲の所を5.1chサラウンドと2chステレオで聴き比べてみたいと思います。
佐藤 これはどちらも凄く臨場感が豊かで、ぱっと聴いただけでは違いがわかりませんね。メーカーの方にお訊きしますが、こちらの製品は前方から音を出して、このような臨場感を出していこうというシステムですよね。
ボーズ広報担当 この機械自体は、例えばステレオ2chのサウンドでも5.1chに変換する機能を持っています。例えば音楽は通常、楽曲が後ろから聴こえるということは一部を除いてありません。基本的にはフロント重視なので、むしろ5.1chよりもこうした2つのスピーカーによるフロントサラウンドの方が自然に感じていただけるのではないかなと思います。映画などは、やっぱりその移動感を強調している部分もありますので、そういうものであれば5.1chの方がいいとおっしゃる方もいると思います。弊社としては、音楽中心のライフスタイルの方にはむしろフロントサラウンドをお勧めした方が、結果的に良いのではと考えています。
佐藤 何かそういう開発のコンセプトが非常に伝わってくる感じがします。すごく自然なサウンドですよね。当然、大音量は迫力が出るんですけれども、ボリュームを絞ったときに、非常に音がクリアだという印象を受けます。私が今、自宅で使っているシステムは、ボリュームを絞ると聴こえづらくなり、それがもの凄くストレスに感じて、結果使うのが億劫になってしまう。これならば使い勝手も良く、ストレスなく入れるような感じがしますね。本体の大きさも、すごくコンパクトにまとまっていますし。
野間 現在佐藤さんがお使いのシステムは、後ろにもスピーカーを置くタイプですか。
佐藤 そうなんですが、リビングに置こうとすると、結局後ろには置けないんですよね。泣く泣く部屋のサイドに置いています。コードの結線と配線が面倒なこともあり、リアスピーカーは本当に宝の持ち腐れ状態になっていて、もったいない感じがしますよね。
野間 先ほど音量を絞った際でもクリアに聴こえるとおっしゃっていましたが、視聴するシステムの違いで、作品の内容が良く感じたり、かえってストレスに感じたりするような体験が、一般のユーザーの方にももっとあると良いなと、私は思います。アーティストや録音エンジニアの方など、「こういったものをつくりたい」と考え、作品にこめた気持ちも、それが受け手にまで伝わらないと、その作品自体をちゃんと表現できたことにはならないと思うんですね。
佐藤 全くその通りだと思います。多くの方々に作品とシステムの本当の魅力が体験できれば良いと思います。
高品質な音楽ソフトへの期待はますます高まっている
野間 最近のユーザーの方々は、どのような環境で音楽DVDを楽しんでいるのでしょうか。
佐藤 音楽DVDに限って言えば、やはり今回のような本格的なシステムを使って鑑賞されている方は一部のユーザーに限られているのではという認識を持っています。5.1ch音声の収録に関しても、2chステレオでパッケージをリリースした場合と反響がほとんど変わらないので、そういった意味では、5.1chサラウンドシステムに対する理解が、音楽DVDに関してまだ低いという認識を持っています。
野間 ハピネットさんとしては映画も含めて色々なジャンルのDVDをリリースされていると思いますけれども、御社で音楽事業に力を入れるきっかけとなるものは何だったのでしょうか。
佐藤 当社では約15年前に普及したレーザーディスクから始まって、映画パッケージのリリースを主に行っていましたが、DVDへの切り替えは1998年位からでした。映画のビジネスをやっていると、いろいろなクライアントから「映画もあるけど、こういう音楽ものはどう?」といったお話もいただく機会がありました。今から約3年ほど前からは、そういった音楽DVDへのリクエストがエンドユーザーから非常に多くなってきたことと、今後DVDに力を入れていくのであれば、映画だけでなく音楽のタイトルも揃えていった方がユーザーの満足度も良いだろうということになりました。音楽の商材については新規事業的なとらえ方、考え方で、総合的に映像の事業を広げて行こうというところから始まっています。
野間 今回ご紹介いただいたKISSのライヴDVDのほかにも、例えばこれから御社が発売されるラインナップの中で注目のタイトルがあれば教えていただけませんか。
佐藤 そうですね。7月には昨年元プロコル・ハルムのゲイリー・ブルッカーがロンドン郊外で開催したチャリティー・イベントのライブ映像をリリースします。出演はエリック・クラプトンを筆頭に、リンゴ・スター、ロジャー・テイラー、ザ・ドリフターズ等、超豪華な顔ぶれです。2人のほかにもクラプトンのファンから見るとかなり面白いアーティストが集まって、お互いに名曲を携えて参加しています。「2大巨塔」が集まる華やかさと、通好みな人たちの食指もくすぐる、今夏注目のアイテムの1つです。
良質なソフトと再生機器で音楽がもっと楽しくなる
野間 佐藤さんが普段お仕事をなさる上でのマインドの部分と申しますか、音楽ファンにこんな魅力的なタイトルを紹介したいといった意気込みをお聞きかせいただければと思います。
佐藤 そんな大それた思いを抱いているわけではありませんが、やはり良い映像や音楽を一人でも多くの方に見て欲しい、聴いて欲しいという、そういう単純な考え方ですね。
野間 でも、それが一番重要ですものね。
佐藤 中途半端にやるよりはそれが一番シンプルで良いと考えています。弊社ではマスで広がるようなアイテムをやっているわけではないので、あるジャンルに本当に強いスタッフが集まって、例えば3,000人でも良いので、音楽好きのファンに満足していただけるようなものをリリースしていくというのが基本ですね。
野間 佐藤さんとしてはロックが好きなんですか。
佐藤 私はどちらかというとポップスの方が好きなんですよ。あとはロック以外の、いわゆるボサノバとか、ジャズとかソウルとか。バリバリのロックというよりは、80年代のブリティッシュロック、ポップ系の方が好きですね。
野間 ホームシアターの場合も、結局は音がすごく良いとか、映像がすごくきれいであることよりも、結局は複雑な操作なしに、大人も子供も見たいものを入れれば見られる手軽さ、魅力的な作品が「いつでも楽しめる」ということが、本当に一番必要な要素なんじゃないかなと思います。
佐藤 やはり映像や音楽を高機能なシステム機器が高品位に再生してくれるというのは今の時代の楽しみ方であると思います。私たちも、例えば60年代、70年代の、恐らく「幻の映像」と呼ばれるような作品がまだ数多く存在していて、そういった素材を仮に将来的に作品化した時に、音声や映像の痛んでいる部分をある程度ハードウェアの力で自然に再現してくれれば良いと思うし、そんな機能をさりげなく搭載している製品は凄く魅力的だと思います。 |