〜〜今回の取材を行った時点で、『リーンの翼』のDVDは全6巻のうち、3巻までが発売されていた。今回、若林氏に“聴きどころ”となるシーンを収録したディスクをセレクトしていただいたところ「音がギッシリ詰まっている」ということで1巻をリファレンスに選ぶことになった。1巻はふんだんな戦闘シーンだけでなく、富野作品の持ち味でもある「キャラクターたちによる、世界観を語る長尺のセリフ」を、存分に楽しめる1本だ
鈴木 第1巻全体を通して再生してみましたが、皆さんの印象はいかがでしょうか。
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ボーズのホームシアター視聴室にて。作品『リーンの翼』の音響監督である若林氏に、「3・2・1 GSX」で再生したサウンドを体験したいただいた |
若林 ボーズのシステムらしい、中高音のハッキリとした音がしますね。音がシャープなので、セリフがとても分りやすく聴こえます。クオリティに関してどうかと聞かれれば、何を基準にするかによって印象は変わってくると思います。私たちが日頃、再生に使っているのはTHX方式に準拠して設計された試聴室です。その環境と比べれば違いがあるのは当然だと思います。そのような環境と比べると高音と低音に少し物足りなさを感じます。ただこの小さなスピーカーとベースモジュールで、これだけの音を楽しめるなら充分満足できます。小さなスピーカーから驚くほど迫力のある音を鳴らす、ボーズらしいシステムだと感じました。
鈴木 サラウンド感はどうでしょうか?オススメのシーンなど。
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バイストン・ウェルより現れたオーラシップと地上軍との戦闘シーン。戦闘機の移動感と迫力たっぷりの重低音も楽しめる、サラウンドの聴きどころの一つだ |
若林 第1巻の「チャプター3」の戦闘シーンは、後方からのサラウンド音が多く収録されていますので、そこでチェックしてみました。
爆発音や遠くから飛んでくる戦闘機など、スピーカーを置いた位置よりも広い範囲から聴こえてきます。フロントに置いた2つのスピーカーよりも広がった場所から音を感じるということは、サラウンドの効果は十分に再現されているということです。斜め後ろから爆発音がしますが、後方からの音も録音時に設定した場所近くから聴こえてきます。
〜〜5.1chのサラウンド効果についても音響監督の手腕によるものだ。若林氏の場合は「作品に集中してほしい」と考え、背面の音は臨場感を持たせつつも、出しゃばらないように録音している。その雰囲気を見事に再現したようだ。
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戦闘シーンの効果音にBGM、キャストのセリフなどが重なる「音数」の多いシーンも3・2・1 GSXは上手に表現してみせた |
鈴木 ただ今聴いていただいた感じからは、高音と低音が少し物足りないとの事ですが、製品本体のイコライザー機能を使えば、サウンドの補正が可能です。
若林 今のはデフォルトでの再生だったんですね。では少し調整してみましょう。確かに調整すると音に厚みがでて、イメージしている音に近づきますね。低音を発するベースモジュールを壁際に置くと、より低音に迫力が増すと思います。
〜〜3・2・1 GSXのサウンドは、筆者としては満足できる範囲に入っているが、若林氏の耳はさらに上を目指し、細かなイコライザーの設定を追い込んでいった。その表情からは、若林氏の作品に対する愛情が伝わってくる。
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主人公のエイサップ・鈴木とリュクス・サコミズが空を翔けるシーン。第1巻のクライマックスとなる舞台を臨場感溢れるサラウンドが盛り上げる |
若林 最近は簡単な製品がありがたがられる風潮がありますね。それはそれで否定をするつもりはありませんが、一方で私たちの世代は趣味に手間をかけてきた世代です。オーディオなどについても「買ってきて終わり」、ということはなかったですね。何か自分なりの一工夫を加えて楽しもうとするのが楽しいんですよ。3・2・1 GSXも操作は簡単だけど、使う側が設置場所などに少し気を配るだけで、再生する音が大きく変わってきましたね。システムはコンパクトだけど、それだけのポテンシャルが備わっているということでしょう。
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