公開日 2014/10/03 15:18
【第100回】“ハイレゾとは何なのか?”− 楽曲制作プロセスからみるハイレゾ考察
[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
■まだ続く“ハイレゾって何なの”論争 − 高橋敦が制作プロセスから考察する“ハイレゾの姿”
“ハイレゾとは何なのか? 何をもってハイレゾとするか?” − この問題は、昨今のオーディオ界隈において大きなトピックのひとつになっている。国内では、今年になりJEITAによる「ハイレゾ音源の定義」、日本オーディオ協会による「ハイレゾ対応機器の定義」が発表されたが、それぞれ現段階で明確な共通定義がない状態であることも、議論を生む背景になっているだろう。
以前Phile-webでは「ハイレゾ対応機器の定義」について、評論家・山之内正の考察『オーディオ協会「ハイレゾ」定義の意義とは?』を掲載した。続いて今回は、「ハイレゾ音源」に関する全体的な“ハイレゾ論争”に、当連載担当の高橋敦が楽曲制作プロセスの観点から切り込んでいく。(編集部)
この連載の冒頭はだいたいにおいてロマンティック浮かれモードというかピースな愛のバイブスでポジティブな感じだが、今回はそういうユルい導入はさておき、全く遊びのない感じで本題に入ろう。
国内外の各団体から再生機器や音源についての「ハイレゾの定義」が発表されている。
●44.1kHz/24bit以上は「ハイレゾ」 − JEITAがハイレゾの定義
http://www.phileweb.com/news/audio/201403/27/14299.html
●日本オーディオ協会の“ハイレゾ”定義、スペック表記40kHz以下でも認める場合も
http://www.phileweb.com/news/audio/201406/18/14596.html
これらの定義に対して「厳密さが足りない」「これでは正しい理解を促せない」等の意見もあるようだ。確かに、これらの定義は完璧なものではないかもしれない。
しかし僕が思うに、特に物事の初期段階においては、定義が厳密すぎて遊びがなく、柔軟性を欠くというのもまずい。まずは大枠だけ決めておき、その広い枠の中で様々な試みが行われ、いい感じにこなれて、いいところに落ち着いてまとまってくれると期待したい。なのでいまは「ツッコミどころ」が各所に残っているくらいでちょうどよいのではないかと思う。
ただしそれは、その「定義」を運用する側や受け取る側が、ちゃんとその「ツッコミどころ」を認識した上で、それを悪用せず誤解せず、よい方向に柔軟に運用し受け取ることができればの話だ。本来リスナー側には、「ハイレゾとは?」などという知識や考察は、最小限しか必要ないはず。考えすぎで音楽を楽しみにくくなってしまったら本末転倒だ。しかし「より問題なのは何も考えず何の知識も持たないことよりもむしろ、考えや知識を不十分あるいは誤って持つことだ」という言葉もある。いや僕が自戒を含めて勝手に作った台詞だが別段に斬新なものではないので、過去の偉人とかも同じようなことはきっと言っているはずだ。
とはいえ、もう考え始めてしまったのならば、とりあえずある程度は考えや知識を深めてみるのがよいだろう。それを踏まえた上で「だがしかし俺は気にしない!」という選択だってアリなのだから。
ということで今回は、その「ツッコミどころ」の確認も含めて、「ハイレゾ配信音源」の正体、種類、作られ方、そういったものの要所を説明していこうと思う。もちろん録音・再生機器も重要だが、オーディオファンにとってのまさに源(ソース)は音源だ。実際にハイレゾについての議論においても、機器よりも音源に関するものの方が、より活発な印象がある。ということで、まずはそれについて把握しておきたい。
…といっても、この記事に目を通すような方にとっては既知の内容が多いだろうが、いわゆる「まとめ」として確認していただければと思う。僕も確認と前述の自戒の意味を含めつつ、書き進めていく。
以前Phile-webでは「ハイレゾ対応機器の定義」について、評論家・山之内正の考察『オーディオ協会「ハイレゾ」定義の意義とは?』を掲載した。続いて今回は、「ハイレゾ音源」に関する全体的な“ハイレゾ論争”に、当連載担当の高橋敦が楽曲制作プロセスの観点から切り込んでいく。(編集部)
この連載の冒頭はだいたいにおいてロマンティック浮かれモードというかピースな愛のバイブスでポジティブな感じだが、今回はそういうユルい導入はさておき、全く遊びのない感じで本題に入ろう。
国内外の各団体から再生機器や音源についての「ハイレゾの定義」が発表されている。
●44.1kHz/24bit以上は「ハイレゾ」 − JEITAがハイレゾの定義
http://www.phileweb.com/news/audio/201403/27/14299.html
●日本オーディオ協会の“ハイレゾ”定義、スペック表記40kHz以下でも認める場合も
http://www.phileweb.com/news/audio/201406/18/14596.html
これらの定義に対して「厳密さが足りない」「これでは正しい理解を促せない」等の意見もあるようだ。確かに、これらの定義は完璧なものではないかもしれない。
しかし僕が思うに、特に物事の初期段階においては、定義が厳密すぎて遊びがなく、柔軟性を欠くというのもまずい。まずは大枠だけ決めておき、その広い枠の中で様々な試みが行われ、いい感じにこなれて、いいところに落ち着いてまとまってくれると期待したい。なのでいまは「ツッコミどころ」が各所に残っているくらいでちょうどよいのではないかと思う。
ただしそれは、その「定義」を運用する側や受け取る側が、ちゃんとその「ツッコミどころ」を認識した上で、それを悪用せず誤解せず、よい方向に柔軟に運用し受け取ることができればの話だ。本来リスナー側には、「ハイレゾとは?」などという知識や考察は、最小限しか必要ないはず。考えすぎで音楽を楽しみにくくなってしまったら本末転倒だ。しかし「より問題なのは何も考えず何の知識も持たないことよりもむしろ、考えや知識を不十分あるいは誤って持つことだ」という言葉もある。いや僕が自戒を含めて勝手に作った台詞だが別段に斬新なものではないので、過去の偉人とかも同じようなことはきっと言っているはずだ。
とはいえ、もう考え始めてしまったのならば、とりあえずある程度は考えや知識を深めてみるのがよいだろう。それを踏まえた上で「だがしかし俺は気にしない!」という選択だってアリなのだから。
ということで今回は、その「ツッコミどころ」の確認も含めて、「ハイレゾ配信音源」の正体、種類、作られ方、そういったものの要所を説明していこうと思う。もちろん録音・再生機器も重要だが、オーディオファンにとってのまさに源(ソース)は音源だ。実際にハイレゾについての議論においても、機器よりも音源に関するものの方が、より活発な印象がある。ということで、まずはそれについて把握しておきたい。
…といっても、この記事に目を通すような方にとっては既知の内容が多いだろうが、いわゆる「まとめ」として確認していただければと思う。僕も確認と前述の自戒の意味を含めつつ、書き進めていく。
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